出版社内容情報
冷戦初期の旧ソ連邦を対象に、「戦時=冷戦型科学技術体制」の形成過程を追求する。事実資料の背後にある人間臭い真実に触れる。
内容説明
人類の英知をなぜ、かくまで大規模に軍事研究に注ぎ込んだのか。本書では、冷戦初期の旧ソ連邦を対象に、「冷戦型科学・技術体制」の形成過程を追求する。そして、膨大な事実資料の背後にある、深刻ではあるが、きわめて人間臭い「真実」に触れる。
目次
序章 冷戦初期旧ソ連邦における軍事技術開発史研究の課題と方法
第1章 旧ソ連邦初の原子爆弾開発計画の全体像
第2章 ソヴィエト物理学者の思考と行動
第3章 舶用原子力機関開発の最初期とその問題点
第4章 ロケット開発と装備省
第5章 ジェット機開発とドイツの技術
第6章 レーダーの開発、および、レーダー・ミサイル対空防衛網の構築
第7章 初期の電子計算機開発
終章 旧ソ連邦における“冷戦型科学・技術体制”―まとめとその後
著者等紹介
市川浩[イチカワヒロシ]
1957年京都市生まれ。1982年大阪外国語大学ロシア語学科卒業。1989年大阪市立大学大学院経営学研究科後期博士課程単位取得退学。広島大学総合科学部講師、助教授、教授を経て現在、広島大学大学院総合科学研究科教授、博士(商学、大阪市立大学、1997年)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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無重力蜜柑
8
面白かった。相変わらず大量のロシア語史資料を渉猟し、技術部分まで深く掘り下げた記述で圧倒される。ただ、自分にも多少馴染みのある分野なのでまだ読みやすかった。前著『科学技術大国ソ連の興亡』はソ連の全期間をいくつかの産業技術から俯瞰する本だったが、こちらは冷戦初期の軍事技術、中でも冷戦で決定的な役割を果たした核兵器体系の構築が主題になっている。具体的に取り上げられるのは原子爆弾、原子力潜水艦、弾道ロケット、ジェット機、レーダーとそれによる防空網、そして計算機である。2022/11/06
YS-56
1
謎の赤い帝国が開発した秘密兵器群について鉄のカーテンを開いてみたらこうだった、という大変興味深い内容でした。核関連開発は文字通り放射能を撒き散らしながら開発に邁進し、ロケット関連は官庁の権限維持・拡大のために利用されと、どれもこれもかなり無茶してます。また、科学者の行動の動機の一つに恐怖があったのがいかにも共産主義的というか、スターリン主義的というか。皆、シベリアで木を数えたくなかったんでしょうね。2010/05/05