著者等紹介
ボウエン,エリザベス[ボウエン,エリザベス][Bowen,Elizabeth]
1899~1973。17世紀以来のアングロ・アイリッシュ地主階級ボウエン一族の末裔として、アイルランドのダブリンで生まれ、その後まもなくイギリスへ渡る。20代の初めから小説を書き始め、73歳で没するまでに10編の長編小説と90編余の短編小説を書いた。グレアム・グリーン等とも親交があり、文芸評論をはじめ、旅行記、児童書、評論等も手がけた。この間ダブリン大学、オックスフォード大学より名誉博士号を受ける。最後の長編Eva Troutは第1回目のブッカー賞(現在はマン・ブッカー賞)の候補となる
太田良子[オオタリョウコ]
1962年東京女子大学文理学部英米文学科卒業。1980年東京女子大学大学院英米文学研究科修士課程修了。1994‐5年ケンブリッジ大学英文科訪問研究員(ダーウィン・カレッジ)。東洋英和女学院大学国際社会学部教授、日本文芸家協会会員
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
miyu
34
短篇13作。どれも短いがなぜか大変読みづらく読了するのに思いのほか時間がかかった。人の心理の裏側をほんの僅かな仕草や状況の移り変わりで伝える点は凄いが、短い作品の中に伏線が張り巡らされ過ぎているせいかとても疲れる。トレヴァーのように潔い感じはあまりなくて残念だが私の好みではなかった。タイトルの「幸せな秋の野原」はマキューアンの「贖罪」にやや似た雰囲気のビターな作品(しかし書かれたのは贖罪の50年以上前!)これはとても好き。風景描写が美しくまさに幸福な気分で始まるが、ラストは物悲しく読了後も長く心に残った。2015/07/05
藤月はな(灯れ松明の火)
23
第二次世界大戦の張りつめた空気が色濃い二弾。表題作がラストで印象が一変するのが印象的でした。「親友」の婚約が既に決まった同性へのコンプレックスとその婚約者を影で奪っている優越感、察しの悪い同性と頼りない男どもに対する苛立ちなどの描写は辻村深月さんや湊かなえさんを彷彿とさせます。「相続ならず」の自分を性欲処理の道具として見なかったマダムを殺害した男の鬱屈とした独白が強烈です。「悪魔の恋人」は典型的なホラーなのか、恋人が戦犯となり、その関係者までも極秘に連行されるという暗喩かで印象が変わります。2013/03/23
愛玉子
7
ミステリ短編集とあるが、謎解き要素は全く無い。語られない事柄があまりに多く、美しい景色の描写はいつしか不安や悪意に満ちた内面の描写になってゆく。ブラックでヒッチコック風の「ワーキングパーティー」や、幻想的で美しい表題作がよかった。それにしても、わかりにくい訳文である。原文が比喩と倒置法を多用しているようなのだが、何も逐語訳しなくても。「彼は首をひねった、果たして彼女は感じているのか、感じているに違いないが、彼らの登場がいかに破天荒なことだったかを。」(引用)原文で読める英語力が私にあればいいのだが。2009/10/03
カムリン
5
1に比べると毒が薄い。怖い話なのかと身構えて読むと、そうでなかったり。訳文がわかりにくいのと、言わず語らずが多いのとで、行きつ戻りつ考え考え読み進め、読んでからも「それで真相は何?」としばし考えこんでしまう。短編集にしては読むのに非常に時間がかかる。じっくり腰をすえて取り組むべき本。個人的に楽しかったのは「ワーキングパーティー」「彼女の大盤振舞い」「蔦がとらえた階段」。2011/12/09
madhatter
5
再読。前巻よりも長めの作品が多い。また、ボウエンのブラックな風味が利いたユーモラスな面に触れられる(「ワーキング…」「彼女の…」など)。そのせいか、前巻で強調された「暗さ」だけで作品を解釈していいか、ユーモアに限らず、多面的な解釈が可能ではないかと疑問が残った。特に「蔦が…」など、訳者氏が言うように、ニコルソン夫人は「虚飾に満ちた」「ヴァンパイア的」存在としてしか捉えられないのか。私は彼女の孤独の如きものを感じるのだが。その他お気に入りは、表題作及び「そして…」「バレエの先生」「相続ならず」「夏の夜」。2011/11/16