内容説明
タフ・ヴェイル判決(1901年)とは、南ウェールズのタフ・ヴェイル鉄道会社で起きたストにより生じた損害を、合同鉄道従業員組合が会社に支払うように命じた20世紀最初の「弾圧判決」である。本書は、会社、労働組合、裁判所などが残した史料をもとに、そのストライキと裁判の過程をミクロ・ヒストリーとして再現し、同時代のイギリスにおけるソーシャリズムとリベラリズムの対立・相克が個別労働組合に凝縮して現れた、その複雑な諸相を具体的に明らかにする。同時に、労働争議法(1906年)によりタフ・ヴェイル判決が廃止されるまでの鉄道労働組合の運動の過程を、同判決の廃止あるいは受容を求める全国的な労働運動・政治運動と関連させてマクロ・ヒストリーとして辿り、ここでもソーシャリズムとリベラリズムの対立・相克の諸相を明らかにする。
目次
序章 イギリス労働史におけるタフ・ヴェイル判決
第1章 タフ・ヴェイル鉄道のストライキ
第2章 ストライキ終結以降の運動
第3章 裁判の展開過程
第4章 タフ・ヴェイル判決に対する反対運動
終章 ASRSにみるソーシャリズムとリベラリズムの相克
著者等紹介
松村高夫[マツムラタカオ]
1942年横浜市生まれ。1964年慶応義塾大学経済学部卒業。1969年慶応義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了。1976年Ph.D. in Social History,University of Warwick,U.K.慶応義塾大学経済学部教授
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感想・レビュー
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志村真幸
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1900年に南ウェールズのタフ・ヴェイル鉄道で発生したストライキは、結果として労働組合の活動に大きな制約を与えるような転換点となった。 本書は、そのストライキの詳細、鉄道会社と労働組合の裁判、その後の経過を追っている。従来から有名ではあったものの、その歴史的評価は一転二転してきた「事件」であり、本書ではミクロヒストリー的な解析を行うことで、改めてその位置づけを問う内容となっている。 スト破りへの対抗策、裁判での証言、私信などを多用しつつ、読み解きが進められていき、ある種、探偵小説的な興趣がある。2021/03/08
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