出版社内容情報
【内容】
現代の論点として急速に浮上しつつあるエリートの教育。近代ヨーロッパで形成され、100年前の世紀転換期に前後して急速に構造転換を遂げて現代的システムに席を譲り、そして今あらためて憧憬の対象となったかのように見える19世紀的なエリートの教育とはいかなるものであったのか。イギリス、フランス、ドイツ、ロシアという性格を異にする4つの国をとりあげ、中等教育から高等教育をへて国家と社会のエリートにいたる経路の制度構造と社会的機能の変化、エリートたちに人格化されたその文化の内実を問う。そこには、近代ヨーロッパに共通する教養文化の様相と各国の個性が開示されるであろう。
【目次】
序 問題と対象
1 エリートの学校制度と機能
1 近代イギリスのエリート教育システム
2 近代フランス中等教育におけるエリートの養成
3 近代ドイツのエリート教育
4 19世紀ロシアのエリート教育
2 エリートの学校文化と紐帯
5 近代オックスフォード大学の教育と文化
6 近代フランス高等教育におけるエリートの再生産
7 ドイツエリートのエートス
8 帝政期ロシアにおける古典語教育の運命
あとがき
文献解題/コラム
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ゲオルギオ・ハーン
9
19世紀前後の英仏独露の高等教育と大学についてそれぞれ専門の学者が執筆した一冊。昔ながらの古典教育と産業発展の中心となった自然科学を限られた時間でどのように学習させるかという点が悩みどころであり、国の産業を発展させるためには自然科学を中心とした理系科目に時間を割く必要があるが、従来のエリート階級の価値観や規律を維持するには古典科目を中心とした文系科目が重要になる。それに対する対応は国ごとに特色が出ており、従来のエリート階級の価値観の優位を出したいフランスは自然科学よりも古典が上位とした動きが興味深かった。2020/07/04
晴天
1
社会の指導層を養成するエリート教育について、主に中等教育を中心に比較考察する。貴族など旧来指導層と期待された層と教育歴を持つ層とが徐々に乖離してメリトクラシーに推移する様は国によって異なり、後発のロシアが特に学生の多様性が高いことが興味深い。ラテン語ギリシア語といった古典教育の重視は、同じ教育歴を持つ人間同士の共有経験となり紐帯となり同時に排他性ともなるが、「役に立たない」「実学を」という反感も古くからあり、それに対する抵抗も根強い。そうした様相は、人文科学や教養に対する今日に至るせめぎ合いを思わせる。2022/02/02
本の紙魚
0
近代ヨーロッパの高等・大学教育についてまとめた一冊。統計データを用いて、それぞれの章を日本の大学教育者たちがまとめている。それなりに発見はあるが、読み物としては正直あまり面白くない…大学の授業で資料として使われる感じ。古典教育が重視されていたり、ラテン語・ギリシア語などの重要性は、現在でもヨーロッパの知識層にラテン語知識が教養としてあることからも納得。日本の大学教育も以前は教養重視だったが、今は大衆化によって実学主義に押されている。そもそも日本の大学生は(東大も含めて)この本の言うエリートではないけれど。2021/02/03




