出版社内容情報
私たちは「雪」と「氷」を区別する。それはもちろん、両者が別のものだからだ――しかしもしかしたら、自分が雪と氷を区別する言語を話しているから「別のもの」に思えるのではないだろうか?
言語学者たちはこのような問いに答えるべく、世界中の言語を調べはじめた。するとさまざまな言語に、人々が住む環境の影響を受けて言葉が形作られてきた痕跡が見つかるという。
たとえば高低差2000メートルもの斜面で暮らすある人々は、「左右」にあたる言葉を持たず、ものの位置を常に「上り側」「下り側」で示す。赤道付近に暮らすある人々は、時刻を語る際に空の特定の方角を指差す。ある狩猟民族は、存在しないとされてきた「匂いの抽象語」を持っている。そして温暖な地域の一部の言語は、「雪」と「氷」を区別しない。「言語は、人間の経験の他の側面と切り離してしまっては理解できない」のだ。
かつては、あらゆる言語に共通する普遍的な特徴がいくつもあると考えられていた。しかし、西欧言語とは類縁関係にない言語のフィールド調査が進んだ結果、その仮定は覆されつつある。著者は、むしろ今問うべきは「なぜ言語はここまで多様なのか」だと語る。少数話者言語の消滅が進行する中で届けられた、言語と認知の可能性についての書。
【目次】
はじめに
第1章 未来はあなたの背後にある ――時間
第2章 西に曲がって ――空間
第3章 あなたのキョウダイは誰? ――人やモノのカテゴリー
第4章 グルー色の空 ――色と匂い
第5章 砂漠の氷 ――自然環境への適応
第6章 発話を見る ――対話と文法化
第7章 「nose」は鼻音から始まる ――音と意味のつながり
第8章 〇〇に目がない? ――文法の普遍性と相対性
終章
謝辞
訳者あとがき
原注
索引
内容説明
空を指して時刻を語り、「右」や「左」がなく、匂いを抽象的に精密に語る。世界の見方がどれほど異なりうるかが世界中の言語を通して見えてくる。
目次
第1章 未来はあなたの背後にある―時間
第2章 西に曲がって―空間
第3章 あなたのキョウダイは誰?―人やモノのカテゴリー
第4章 グルー色の空―色と匂い
第5章 砂漠の氷―自然環境への適応
第6章 発話を見る―対話と文法化
第7章 「nose」は鼻音から始まる―音と意味のつながり
第8章 ○○に目がない?―文法の普遍性と相対性
終章
著者等紹介
エヴェレット,ケイレブ[エヴェレット,ケイレブ] [Everett,Caleb]
マイアミ大学人類学部教授、同学部長を経て、現在、デラウェア大学教養学部教授、同学部長。専門は人類学・言語学。言語と非言語的な認知・文化・環境の相互作用に関心を持つ。父は『ピダハン』(屋代通子訳、みすず書房、2012)の著者のダニエル・L・エヴェレット。幼少期に宣教師の父とともにピダハン族の村で過ごした。2023年、本書で米国出版社協会の学術出版賞The PROSE Awardを受賞
大久保彩[オオクボアヤ]
翻訳者。東京大学大学院総合文化研究科修了。修士(文化人類学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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