出版社内容情報
日本語の始原の姿を突き止めることで「日本の始め」を明らかにしようとした、4人の国学者たち。
契沖(1640-1701)がたどりついたのは「漢字」だった。仮名発生以前、中国語をあらわす文字である漢字によって、日本語はどのように文字化されていたのか。
賀茂真淵(1697-1769)は「音」に言語の根幹を見いだす。「語を意味を有する各音に分解する」という真淵の方法は、音節、五十連の音の気づきをもたらした。
言語化されたことばを精緻に読み解くことで上代の人間のこころを知ろうとした本居宣長(1730-1801)。その先に結実した係り結びの研究、漢字の字音研究は、今日までその価値を失っていない。
「異端の国学者」とも称される富士谷御杖(1768-1824)は、心のままを直言しない、感情のコントロールを経た表出である「倒語」を追求し、人の感情=人情のありかたを深く探った。
集約・融合しながら現代の日本語研究にまで脈々とつながる知の生成過程を、きめ細かに追跡し、ダイナミックに読み解く。
内容説明
契沖、賀茂真淵、本居宣長、富士谷御杖。日本語についての国学者たちの観察、分析、考察を江戸期の知のひろがりの中に置きなおし、その「方法」を再評価する。
目次
序章 江戸のエピステーメー
第1章 フィロロジスト契沖(契沖の『万葉集』研究―万葉仮名を整理する;『和字正濫鈔』は仮名遣い書か;橘成員との論争;語源・異名への意識―『円珠庵雑記』をよむ)
第2章 賀茂真淵―経験、直感による知覚(『冠辞考』;直感によるアプローチと論理;歌を詠むこと・歌を理解すること―実践的解釈論;五十音図による音義的解釈のさきがけ)
第3章 本居宣長(文法のダイヤグラム―『てにをは紐鏡』;仮名によって漢字の発音を示す―『字音仮字用格』;メタ言語としての口語;宣長の方法―『古今集遠鏡』;上田秋成との論争―「呵刈葭」)
第4章 富士谷御杖の言霊倒語説(異端の国学者;歌を詠むことで「真言」を追究する;さまざまな言語学的知見;言霊倒語説)
終章 詩的言語と国学者
著者等紹介
今野真二[コンノシンジ]
1958年神奈川県生まれ。1986年早稲田大学大学院博士課程後期退学。高知大学助教授を経て、清泉女子大学教授。『仮名表記論攷』(清文堂出版)で金田一京助博士記念賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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