出版社内容情報
かつてこの世の物語の多くは、土地に息づく小さな神々の声をもって語られていた。世界を語る言葉は「風土を生きる身体」によって紡がれ、人や鳥獣虫魚草木のいのちが宿っていた。そして、人びとは近代の到来とともにそれをあっけなく忘れた。
近代の前と後の断絶。たとえば村共同体の核にあった「神」や「仏」が国家神道によって追放された歴史。あるいは折口信夫が来訪神の祝言に「この世にあらわれたはじめての文学のことば」を聴き、祈りの所作に「芸能の発生」を見た、人びとの暮らし。風土の神々と共にあった民の記憶、民の物語も忘れられていった。
この列島は太古からずっと「ひとつの日本」だったのか。声を奪われつづけた世界のなれの果ての時代に、取り戻した声を手がかりにして再生の道を拓くことはできないか。
説経、山伏祭文、貝祭文、説経祭文、瞽女唄、浄瑠璃、浪曲、パンソリ……、「語り」の声に耳澄まし、失われた声を追い、名残の声に引かれて、足尾銅山、水俣、八重山諸島、済州島をゆく。来るべき「声」の場、そして反旗を翻す詩の可能性を眼差して。
内容説明
かつてこの世の物語の多くは、土地に息づく小さな神々の声をもって語られていた。世界を語る言葉は「風土を生きる身体」によって紡がれ、人や鳥獣虫魚草木のいのちが宿っていた。そして、人びとは近代の到来とともにそれをあっけなく忘れた。近代の前と後の断絶。たとえば村共同体の核にあった「神」や「仏」が国家神道によって追放された歴史。あるいは折口信夫が来訪神の祝言に「この世にあらわれたはじめての文学のことば」を聴き、祈りの所作に「芸能の発生」を見た、人びとの暮らし。風土の神々と共にあった民の記憶、民の物語も忘れられていった。この列島は太古からずっと「ひとつの日本」だったのか。声を奪われつづけた世界のなれの果ての時代に、取り戻した声を手がかりにして再生の道を拓くことはできないか。説経、山伏祭文、貝祭文、説経祭文、瞽女唄、浄瑠璃、浪曲、パンソリ…、「語り」の声に耳澄まし、失われた声を追い、名残の声に引かれて、足尾銅山、水俣、八重山諸島、済州島をゆく、来るべき「声」の場、そして反旗を翻す詩の可能性を眼差して。
目次
第1部 語り(この世の物語は命の記憶をつなぐためにある;「説経」と「祭文」―千年の時間の流れを早送り;なぜ「瞽女」は消えたのか?;浪曲!解放奴隷の魂はビヨーンと震える;なもあみだんぶーさんせうだゆう外伝)
第2部 祈り(語りつぐ声、歌いつがれる祈り―近代的な私たちが忘れて生きているもの;反旗を翻す歌;滅びゆく水の世―足尾鉱毒事件の跡を訪ねて渡良瀬川源流、松木渓谷;来たるべきアナキズム―近代を潜り抜けた「アニミズム」と「異人」をめぐって;旅するカタリとじょろり;「ひとり」たちのための祈り)
著者等紹介
姜信子[カンシンジャ]
1961年横浜生まれ。作家。路傍の声に耳傾けて読む書く歌う旅をする日々を重ねてきた。近年は「口先案内人」と称して、歌や語りの芸能者と共に小さな「語りの場/声が解き放たれる乱場」を開く試みも。『生きとし生ける空白の物語』(港の人)『声 千年先に届くほどに』『現代説経集』(ぷねうま舎)『平成山椒大夫 あんじゅあんじゅさまよい安寿』(せりか書房)『はじまれ、ふたたび』(新泉社)『忘却の野に春を想う』(山内明美との共著 白水社)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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