出版社内容情報
9・11米国同時多発テロから20年。「アラブの春」から10年。国際社会からの関心が薄れるなか、中東は注目すべき変化の途上にある。
「まがりなりにも、選挙を実施している。まがりなりにも、自分たちの手で政党を選び、表現の自由も与えられている。だから、言うべきことは言うべきだし、不当なことをされたらそれに抗議しなければならない。驚くべきことに、2003年以降のイラクには、ちゃんとした「民主主義」が育っていたのだ。だからこそ、彼らは国旗を背負って抵抗運動を繰り広げる」
「女性たちは長らく、社会的権利を奪われるばかりでなく、その身体そのものを支配されてきた。医療や美容、スポーツに携わる女たちは、他者に支配されてきた女性の身体を、自分自身で解放し、女性自身の手に取り戻そうとしている。それだけではない。女たちは、その技術で、負傷した男たちを守っているのだ。男に対して、「守って」というのではなく。「春」は女の顔をしている。それを「冬」へと導いたのは、力に頼るしかない「男社会」だ」
今知るべき中東情勢を歴史的厚みのある記述で伝えつつ、彼の地で失われてゆくものと生まれつつあるものを見つめ続けた時評集。
内容説明
世界中がポピュリズムと権威主義体制の興隆を見ている今、中東の民主化への努力は他人事ではない。第一線の研究者が伝える彼の地の躍動、悲嘆、そして希望。
目次
若者は何を目指すのか
カタルーニャとスコットランドとクルドの、見果てぬ夢の夢
移動する人々の時代は続く
どけ、この文明は入れないぞ
Si le grain ne meurt
アラブがハリウッドのヒーローを演じるということ、雑感
父子鷹
世界は「一九八九」を賞賛する。それが中東を貶める
政治学と地域研究
イラクと中東の「朝」は
ステイホームは自治空間!
「アラブの心臓」が息絶えるとき
「春」はどこにいった
わきまえない私や彼/彼女たちの闘い方
アラブの冬とアフガニスタンの厳冬(そしてポスト「冷戦後」の見えない世界)
色褪せた規範のゴミを紛争地に捨てるな
著者等紹介
酒井啓子[サカイケイコ]
千葉大学法政経学部教授。専門はイラク政治史。現代中東政治。1959年生まれ。東京大学教養学部教養学科卒。英ダーラム大学(中東イスラーム研究センター)修士。アジア経済研究所。東京外国語大学を経て、現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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