出版社内容情報
ポーランドからベルギーに移住したユダヤ人の仕事は服飾業界と決まっていた。ショアーの亡霊から逃れられない母方と、戦後の発展に乗った父方。二人の祖母を行き来しながら育った女性もまた服のバイヤーになるが、やがて自分にぴったりの世界を探し求める。鋭くも優しい眼差しを自らの家系に向けながら、一つの世界の終わりを描くこの自伝的小説は、家族のサーガにしてヨーロッパ現代史であり、文学の可能性を広げることになった。
内容説明
流行服を売ることが家業だった少女の目から、二人の祖母と母そして自らの来し方と、ユダヤ系アパレル業界という世界の終わりを描いた、力強いベルギー文学。
著者等紹介
スコヴロネク,ナタリー[スコヴロネク,ナタリー] [Skowronek,Nathalie]
1973年生まれ。ベルギーの小説家。移住ユダヤ人の第4世代に当たる。ブリュッセル自由大学を卒業し、出版社と家族経営の服飾店で働いた後、37歳で作家デビューした
宮林寛[ミヤバヤシカン]
1957年生まれ。慶應義塾大学文学部教授。専門は19世紀フランス詩とベルギー仏語文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
29
国を持たないユダヤ人が持っていたのは、どこにでもものになる金と裁縫道具だった。アイザック・メリット・シンガーがミシンを発明する前から、どこででも仕事ができるように、ユダヤ人は縫い針と糸を持ち歩いていた。出自は同じユダヤ人でありながら、もともとの性格及び体験から全く別の方向に舵を切った祖父母・両親たちをみながら自身の道を見つけてゆく。既製品→プレタポルテ→ファストファッションの隆盛という服飾業界の変遷に伴う家業の変遷をエッセイ風に綴っている。ファッションの変遷というテーマはザ・ハウス・オブ・グッチと共通。 2022/04/18
tom
21
暮らしに行き詰り、ポーランドからベルギーに移住したユダヤ人家族の物語。生業の針を使う仕事から始め、栄華と没落の経過を書いたもの。ところどころに、ユダヤ人の金銭に執着する理由と体に埋め込まれたこだわりが書いてあり、そうだったのかと思う。緊張感のある文体。これによって最後まで読んだのだけど、面白いかどうかは疑問。途中で自分の家族とプルーストの登場人物をなぞらえるシーンが出て来る。ヨーロッパ圏の人にとっては、プルーストは特別の地位にあるのだなあと思う。この部分だけは、ちょっと興味を惹かれたのでした。2022/06/15
アヴォカド
16
期せずして、佐藤亜紀からベルギー繋がりとなった。仕立て屋さんから始まった商売が、次第に既製服のの大量生産に飲み込まれていく。流行の服を売るユダヤ人家族の歴史と、その家族の中にいて自分の世界を模索する少女。限りなく自伝に近いと思われる小説。ラナ・プラザ崩壊事故も出てくる。ユダヤ系アパレル業界の内実としても、ヨーロッパにおけるユダヤ人史としても、家族史としても読め、少女の成長ものの側面も持つ。2022/05/12
nranjen
6
仕立て屋を代々職業に持つユダヤ人一家の、ベルギーからパリに至るまでの親子4代の栄枯衰退を、時代の趨勢と共に末代が物語る。末代にとっては少女時代に体験したかつての時代と自身の時代、そして作家となった自分の世界とは決定的な違いがある。しかし、そうであったとしても彼女の中に生き続けている代々の誇りがラストを飾っている。1980年代末から90年代のサンティエに行ったことがあり(2000年に入って激変した姿も目撃した)あの活気の裏ではこのようなドラマがあったのだと。かつてあり今は存在しない世界の証言でもある。2023/01/15
Jessica
5
ところどころフランス語系の表現があるも、どうもフランスっぽくないなと思っていたらベルギー文学とのこと。 淡々と描かれる、作り手・売り手として服飾業界に関わるユダヤ系一族の文化・社会史。あまり読んだことのないタイプの作品で、こちらも淡々と読み終えました。社会的な意味での服飾の意味や、古くからの店、商店街一帯がファストファッションに置き換えられていく衰退の様は少し勉強になりました。2022/11/30
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