出版社内容情報
「この卓越した本を読む者は、真に読むということの驚異を感じずにはいられない。……本書は読書についての本だが、私がこれまで出会ったどんな本とも違う。」(S・クーシスト「本書に寄せて」より)
◆文学教授を生業にする著者が、『白鯨』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『心は孤独な狩人』などの名作を6人の自閉症者とともに読んだ読書セッションの記録。自閉症者は「心の理論」を持たない、想像による遊びができないといった偏見は早々に覆されるが、それだけではない。自閉症者がカテゴリー化される以前の「感覚」を通して物語と関わることで、鮮烈な小説体験をしていることが明らかになる。
◆おのおの独特の症状や経歴をもつ彼らの、物語への感受性はときに痛切とも言えるほど鋭敏だ。たとえば『白鯨』を読む第一章では、言葉を話さない自閉症の青年ティトが、どの登場人物よりも鯨に自分を重ねながら小説世界を「泳ぎ」、その感覚を詩に綴りはじめる。『白鯨』のモチーフはやがて、ティトと著者の生活全体を呑み込んでいく。
◆著者は近年の脳科学的知見にもとづいて、「神経多様性(ニューロダイバーシティ)と読書」というテーマをかつてないほど掘り下げている。そこでは、自閉症者と定型発達者、双方の読み方の特性が互いを逆照射し合い、読むという行為の尽きせぬ可能性が浮かび上がる。だからこそ、本書の読後に強く体感されるのは、多様な脳と交感する文学の力の無辺さだ。
内容説明
6人の自閉症者が文学教授とともに『白鯨』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『心は孤独な狩人』『儀式』などの文学作品に分け入った、読書セッションの記録。
目次
プロローグ―言葉の大河に浮かぶ私たちの神経の筏―DJ・サヴァリーズと読書
第1章 海のように揺らめく世界から―ティト・ラジャーシ・ムコパディエイ×『白鯨』
第2章 脳の天空―ジェイミー・バーク×『儀式』
第3章 アンドロイドと自閉症―ドーラ・レイメイカー×『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
第4章 自分の足を見つけ出す―ユージェニー・ベルキン×『心は孤独な狩人』
第5章 当たり前を疑うために―テンプル・グランディン×『ミュート』『ジ・エクスタティック・クライ』
著者等紹介
サヴァリーズ,ラルフ・ジェームズ[サヴァリーズ,ラルフジェームズ] [Savarese,Ralph James]
研究者、エッセイスト、詩人。グリネル大学教授。講義テーマはアメリカ文学、創作、障害者福祉。著書に自閉症の息子DJの半生を振り返ったメモワールReasonable People:A Memoir of Autism and Adoption(Other Press,2007.Independent Publishers Gold Medalを受賞)、2012‐2013年、デューク大学脳科学研究所のニューロヒューマニティーズ研究グループに参加し、ニューロダイバーシティ(神経多様性)と自閉症に関する研究調査をおこなった
岩坂彰[イワサカアキラ]
京都大学文学部哲学科卒。教科書の編集者を経て翻訳家に。訳書多数。関西大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
みこ氏
アヴォカド
まこ
急性人間病