出版社内容情報
「もはや本書への言及なしに、アイヒマン現象は語れない」NYタイムズ書評。従来のアイヒマン像を覆しナチズム研究の一画期をなす。
強制収容所へのユダヤ人移送責任者として絶滅計画の主翼を担ったアドルフ・アイヒマン。このナチ親衛隊中佐については議論が尽くされた感もあるが、じつは肝心な史料の大部分が放置されていた。アイヒマン自身の文章と音声録音である。
戦後アイヒマンが逃亡したアルゼンチンには旧ナチ共同体が築かれていた。アイヒマンはそこで、元武装SS隊員W・サッセン主催の座談会に参加する。サッセンはそれを録音し、テープ巻数にして70以上になる音声のトランスクリプトを作成していた。アルゼンチンのアイヒマンは大量の独白を記し、エルサレムの囚人となった後も8000枚にわたって自己正当化を書き連ねた。
こうした史料が網羅的に研究されてこなかったのは驚くべきことであるが、それは各所に散在し、分量は膨大で内容は耐え難い。さらに、アルゼンチンでのあけすけな記録を本人が偽と証言したため、史料としての価値を確立する仕事が後の研究者に重くのしかかった。本書は一人の哲学者が成し遂げた気の遠くなるような偉業であり、先駆者ハンナ・アーレントとの対話である。
「エルサレムでのアイヒマンの自己演出が、この犯罪者と、そして彼の殺人者としての成功といかに関係しているかを知りたいと願うなら、エルサレム以前のアイヒマンにさかのぼり、また、後の時代に作られたアイヒマン像に基づく解釈の裏に踏み込むことがどうしても必要である」(序章より)。
内容説明
アドルフ・アイヒマンは本当に「悪の陳腐さ」を体現する人物なのか?逃亡先のアルゼンチンで彼は独白を書き連ね、旧ナチに囲まれ大いに語った。1300枚に上るその記録に現れるのは、ナチズム信奉、ユダヤ人絶滅という仕事への自負、権力への執着。エルサレムの囚人となった後は、自己を正当化する8000枚もの文章を書き遺した。この膨大な史料に初めて体系的に取り組み、これまでの通念を覆した重要著作。
目次
序章
「私の名は象徴となった」
幕間劇
アルゼンチンのアイヒマン
いわゆるサッセン・インタヴュー
偽りの安全
役の変更
終章
著者等紹介
シュタングネト,ベッティーナ[シュタングネト,ベッティーナ] [Stangneth,Bettina]
1966年生まれの哲学者。ハンブルク大学にて哲学を専攻、イマヌエル・カントと根源悪についての研究で博士号取得。『エルサレム“以前”のアイヒマン―大量殺戮者の平穏な生活』で2011年に北ドイツ文化ノンフィクション賞を受賞
香月恵里[カツキエリ]
1961年生まれ。岡山商科大学教授。関西学院大学大学院博士後期課程退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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