内容説明
現代精神医学においては「生物・心理・社会モデル」の理念をはじめ、操作的診断基準、精神薬理学、認知行動療法など、20世紀の後半から興隆し、今日ではもはやメインストリームとも言うべき流れが、多くの場面で存在する。そのなかで当然のごとく用いられている概念を根源的に再検証するために、ナシア・ガミーは精神医学者・ヤスパースの『精神病理学総論』(1913)に立ち戻り、精神医学の現状を理解するための理論を組み立ててゆく。ヤスパースの時代から今日に至るまでの精神医学史、その断層を埋めるように論じられる実践的各論は、ただの治療マニュアルにない思索に満ちている。病とは何か、心とは何か、そして精神医学とは何か。米国精神医学界の若き知性による、新世紀の『精神病理学総論』と呼ぶにふさわしい快著である。
目次
第1部 理論編 臨床医は何を考えているのか、そしてそれはなぜか(現状―教条主義、生物・心理・社会モデル、そしてそれに代わるもの;そこには何があるのか―心と脳について;どうやってそれを知るか―心を理解する ほか)
第2部 実践編 臨床医は何をしているのか、そしてそれはなぜか(心の病気の本性について―疾患か神話か?;混乱からの秩序?―精神科疾病分類の進化;DSM‐4の理論―理念型 ほか)
第3部 折衷主義のあとに(生物学と心理学の二極分化の統合―統合主義の希望;多元主義者になるのはどうして難しいのか)
著者等紹介
ガミー,ナシア[ガミー,ナシア] [Ghaemi,S.Nassir]
1966‐。イラン生まれ。タフツ医療センター精神医学教室教授。医学博士。双極性障害(躁うつ病)、不安障害の臨床研究を専門とするが、哲学、公衆衛生学にも造詣が深い。2001年には哲学の修士号(タフツ大学)を取得
村井俊哉[ムライトシヤ]
1966年大阪府生まれ。京都大学大学院医学研究科修了。医学博士。マックスプランク認知神経科学研究所、京都大学医学部附属病院助手などを経て、京都大学大学院医学研究科精神医学教室教授。専門は臨床精神医学、行動神経学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。