トラウマの医療人類学 (新装版)

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  • サイズ 46判/ページ数 375p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784622088714
  • NDC分類 493.74
  • Cコード C3047

内容説明

トラウマという言葉が飛び交うようになって久しい。冷戦終結後には世界各地で内戦が起こり、「民族浄化」という名の虐殺がつづいた。9・11以降、世界の暴力化は加速していき、イラク戦争下の2004年にはアブグレイブの拷問の写真が新聞の一面を飾った。もとは米国でのベトナム戦争帰還兵への対処から生まれたPTSD概念も、トラウマ同様、日本では阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件をきっかけに注目され、自然災害や交通事故から殺傷事件、ドメスティック・バイオレンス、レイプや幼児虐待その他、それぞれの事情に対処するための重要なキイワードとなってきた。だが、これらの言葉は正しく理解されているのだろうか。ヴィジョンなき概念の使用から、さまざまな問題が生まれてきているのではないだろうか。大学で平和社会論を教えるいっぽう、精神科医として医療人類学・文化精神医学にかかわり、性暴力についてのカウンセリングや難民医療にも力を注いできた著者は、このような時代の中で、何を考え、どのような実践をしてきたのか。本書にはそのすべてが映し出されている。移住者問題、薬害エイズ、「慰安婦」問題、PTSD概念と法・裁判、拷問とトラウマ、マイノリティのための精神医学など、その力強く具体的な筆致からは、今を生きるわれわれへの大切なメッセージが伝わってくる。

目次

1 トラウマの医療人類学(トラウマと歴史・社会;トラウマと距離;「加害者」の恐怖 ほか)
2 トラウマ・暴力・法(想像力と「意味」―性暴力と心的外傷試論;PTSD概念を法はどう受け止めるべきか?;精神医療と日本文化―「失調」と「障害」についての一考察 ほか)
3 文化精神医学と国際協力(医療人類学と自らの癒し;フィールドの入り口で―あるいは文化精神医学らしさという呪縛;揺らぐアイデンティティと多文化間精神医学 ほか)

著者等紹介

宮地尚子[ミヤジナオコ]
一橋大学大学院社会学研究科地球社会研究専攻・教授。精神科医師。医学博士。1986年京都府立医科大学卒業。1993年同大学院修了。1989年から1992年、ハーバード大学医学部社会医学教室および法学部人権講座に客員研究員として留学。1993年より近畿大学医学部衛生学教室勤務を経て、2001年より現職。専門は文化精神医学、医療人類学、ジェンダーとセクシュアリティ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

かす実

5
『想像力と「意味」—性暴力と心的外傷試論』という章がものすごく良かった。性暴力の外傷性を「恐怖・象徴的意味・カテゴリーの混乱」という3つの側面に分けて検討するのだが、性暴力に固有のトラウマのあり方について、とてもしっくりくる説明がされていた。2024/02/17

nranjen

5
一冊全体で論文形式になっているのではなく、各章短いエッセイ?論考が集められたものですが、『トラウマ』についての問題点を含めた現状における俯瞰が読んで可能になるようになっている。非常に多くの学びがある。2023/07/10

takao

3
ふむ2024/01/06

Dolphin and Lemon

2
半年ほど読むのを中断していた一冊だけど、申し訳ない、リタイアします… 大好きな宮地先生の本ではあるけど、後半は主に論文をまとめたものでありかなり難しかった。 ただ、最初の文章の冒頭の文章はやっぱり宮地先生の文章好きだなあと思わせてくれる。 もう少し修行して、読み直したいと思います。2024/07/07

しゅんどーん

1
精神科医の著者が今までに関わった、DV・拷問・レイプなど残酷な犯罪の被害者たち、ホロコーストの生存者たち。それぞれに抱えるトラウマ、多様なマイノリティ体験の中に共通する、心身の動きや背景を考察する。彼らの痛みを理解することはできないが、かけてほしい言葉をかけてあげられたらと思う。2021/06/07

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