出版社内容情報
小栗上野介忠順(1827-68)は万延元年の使節団員として渡米し、勘定奉行や外国奉行を歴任、崩壊しつつある幕政を中枢で支えた人物だが、後世の評価は二分した。一方に、横須賀造船所を建設し、最初の株式会社「兵庫商社」を構想した合理主義者で、近代化の立役者という評価があり、もう一方に、薩長との主戦論を唱え無用な戦争に固執したという見方がある。その主戦論が原因で罷免され現在の群馬県に隠棲したが、謀反の容疑をかけられ新政府軍により斬首。以来、逆賊の謗りを受けてきた。
歴史は勝者によって書かれる。幕末維新史も例外ではない。本書は小栗上野介という類稀な人物を敗者の代表として選び、敗者への公正さを要求した人びとが「勝てば官軍、負ければ賊軍」式の明治政府史観に、いかに抗ってきたかを跡づける。それは草の根的に地方で始まり、全国的な歴史観に影響を与えるに至った。本書はこの過程を豊富な一次史料、文学作品、映画、テレビドラマ、記念事業により実証的にたどった。さらに、明治以来何度となく起こった維新ブーム、「エキゾチック・ジャパン」「歴史街道」「ふるさとブーム」など昭和の地方振興との関係や、「失われた10年」打開の鍵を明治維新に求める時流の影響までを丹念に掘り起こした。
小栗終焉の地に暮らしたアメリカ人研究者が幕末維新史にメモリー・スタディーズの手法を導入した意欲作。
内容説明
「勝てば官軍、負ければ賊軍」なのか?明治新政府史観に対する親幕府側の、国に対する地方の、二重の抗いを明治から平成までたどり、歴史の生成を描く。
目次
序論―敗者たちを想起する
第1章 最後の旗本
第2章 明治期につくられた徳川ヒーロー
第3章 悪者の救済
第4章 戦後つくり直された維新の敗者たち
第5章 「失われた一〇年」の小栗と新しいヒーローたち
結論―意味のある風景へ
著者等紹介
ワート,マイケル[ワート,マイケル] [Wert,Michael]
マルケット大学(米ウィスコンシン州)歴史学准教授。専門は日本近世史。1997年ジョージ・ワシントン大学卒業(東アジア研究)。2007年カリフォルニア大学で博士号取得(東アジア史)
野口良平[ノグチリョウヘイ]
1967年生まれ。京都大学文学部卒業。立命館大学大学院文学研究科博士課程修了。京都造形芸術大学非常勤講師。哲学、精神史、言語表現論。著書『「大菩薩峠」の世界像』(平凡社、2009、第18回橋本峰雄賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
田中峰和
takao
aki