出版社内容情報
古代ギリシャの哲学者へラクレイトスは、「なべての物は流れ、すべて〈ある〉はなく〈なる〉のみ」という有名な言葉を残した。本書の表題は、存在(ある)から発展(なる)への、つまりは可逆的な力学的世界観から不可逆的な熱学的世界観への転換を意味している。
古典物理学の三大支柱のうち、力学と電磁気学は、ある時刻における条件が与えられればその後の変化が確定的に決まるという意味で〈決定論的〉であり、また時間の向きを逆転してもそのまま成立するという意味で〈可逆的〉である。これに対し、熱力学は古典物理学においてきわめて異質的な存在で、その著しい特徴は不可逆性にある。熱現象に特有のこの不可逆性は可逆的な力学理論からどのようにして導出できるのであろうか。
本書は、非平衡熱力学の開拓者である著者が〈発展の物理学〉における自らの独創的業績の基礎を体系づけ、その哲学的意義を明示したものである。構想力に富む本書は、不可逆性への新しい視点を提供するとともに、物理学的世界観の変革への契機をはらむものとして注目を集めている。
著者イリヤ・プリゴジンは、ブリュッセル自由大学教授、テキサス大学統計力学・熱力学センター所長を兼ね、非平衡熱力学、特に散逸構造理論への貢献によって1977年度のノーベル化学賞を受けた。
内容説明
存在(ある)から発展(なる)へ、つまりは、可逆的な力学的世界観から不可逆的な熱学的世界観へ。非平衡熱力学の哲学的意義を説く。
目次
序:物理学における時間
第1部 存在の物理学(古典動力学;量子力学)
第2部 発展の物理学(熱力学;自己秩序形成;非平衡のゆらぎ)
第3部 存在から発展への橋渡し(運動学的理論;不可逆過程の微視的理論;変化の法則;不可逆性と時空構造)
付録
著者等紹介
プリゴジン,イリヤ[プリゴジン,イリヤ] [Prigogine,Ilya]
1917年モスクワに生まれる。ブリュッセル自由大学卒業。ブリュッセル自由大学物理化学科教授、ソルヴェー国際物理化学研究所長、テキサス大学統計力学・熱力学研究センター所長を歴任する。非平衡熱力学、特に散逸構造理論への貢献によって、1977年ノーベル化学賞受賞。2003年歿
小出昭一郎[コイデショウイチロウ]
1927年東京に生まれる。1950年東京大学理学部卒業。理学博士。東京大学名誉教授、山梨大学名誉教授。2008年歿
安孫子誠也[アビコセイヤ]
1942年東京に生まれる。1964年東京大学理学部物理学科卒業。1975年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。現在、聖隷クリストファー大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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