出版社内容情報
精神分析は日本でどのように始まり、展開していったのか。戦前・戦後期に生れた精神分析家とその患者たちの物語を紐解く初めての書。
内容説明
矢部八重吉、丸井清泰、大槻憲二、中村古峡、古澤平作。彼らはなぜ精神分析に向かい、生きたのか。人生と臨床の記録を丹念に調査し、歴史の暗闇に初めて光をあてる。
目次
第1章 精神分析家の誕生―矢部八重吉
第2章 精神医学における精神分析―丸井清泰
第3章 文学者の精神分析―大槻憲二
第4章 日本の精神分析外縁―中村古峡
第5章 日本精神分析学会の創設―古澤平作
著者等紹介
西見奈子[ニシミナコ]
心理学博士。2006年九州大学大学院人間環境学府博士後期課程単位修得退学。現在、京都大学大学院教育学研究科准教授、白亜オフィス(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さえきかずひこ
15
心理学者として資料を博捜し、フロイトが創始した精神分析を受容した大正期〜昭和期の分析家たち5人(矢部三重吉、丸井清泰、大槻憲二、中村古峡、古澤平作)の思索と実践を活写することを通して、日本の「家父長的な強い結びつきを持った」(P.225)精神分析コミュニティがいかに曲折を経て形成されたかを共感的に述べてゆく好著。大槻憲二の極端に攻撃的で悪辣な人物像や統合失調症の弟の死を契機に漱石とも交わった小説家から精神分析の手法に影響を受けた民間療法家を経て、最終的に精神科医となってゆく中村古峡の生涯を興味深く読んだ。2019/11/22
くろねこ
6
矢部八重吉、中村古峡、古澤平作、3氏のところが特に感銘を受けた。歴史を知ること、どのような時代をどう生きたのか、そして何を繋ぎ遺したのかを知ること、様々な関係性の中で、確かに葛藤しながら生きた人を感じること、そこから次の歩みは始まると思う。2019/10/14
PukaPuka
5
日本に精神分析が導入された、その始まりとその後のいきさつについて。精神分析家を名乗っても、教育分析を受けていないと、自分のことは見えていない。時代背景を考えると仕方ない面も多い。現在の日本のラカンを巡る状況は、将来歴史としてはどのように語られるのだろうか、などと考えた。2019/04/09
Mark.jr
4
日本の精神分析の黎明期の代表的な5人の人生とその思想・分析手法を解析した本です。まだ欧米でも精神分析が医療に本格的に取り入れ始めたばかりの頃ですので、5人ともフロイトの強い影響下で治療を行っているのが分かります。もっとも治療法自体(もっと言えばフロイトの精神分析も)今見るとやや時代遅れなのはいとめませんが、ここを経て来たからこそ今の精神分析法があるのは間違いありません。2019/07/26
azu3
2
面白くて一気に読んだ。これは、時間と手間のかかった、かなりの労作。著者に感謝。2019/10/07