アフリカ眠り病とドイツ植民地主義―熱帯医学による感染症制圧の夢と現実

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アフリカ眠り病とドイツ植民地主義―熱帯医学による感染症制圧の夢と現実

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  • サイズ B6判/ページ数 368p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622085997
  • NDC分類 498.6
  • Cコード C1022

出版社内容情報

西洋近代医療を通した「他者」認識の方法、植民地社会における医療政策の展開など、ドイツ史からポストコロニアル問題を提起する。ドイツが植民地統治を本格化させた20世紀初頭、ある感染症がアフリカで猛威を振るった。一般に〈眠り病〉と恐れられたトリパノソーマ病である。ツェツェバエを媒介にしてヒトに広がるこの病気は、嗜眠性の髄膜炎を起こして感染者を確実に死に至らしめる。この時期、赤道アフリカではおよそ80万人が犠牲になったといわれる。
当時のドイツ医学は世界最高水準にあり、コッホやエールリヒが国際的に活躍するなか、眠り病の制圧も近いと思われた。だが、ことはそう簡単には進まず、植民地統治期、ドイツ医学は有効な対策を講じることができなかった。現地住民は感染リスクにさらされながらハエの駆除作業に動員され、危険な薬剤の実験台ともなって命を落とした。
第一次世界大戦後にドイツは眠り病の特効薬を開発するが、ヴェルサイユ条約によりかつての植民地は戦勝国の支配下にあった。はたして、この新薬をイギリスやフランスに提供するべきか。ドイツで植民地の再獲得を求める動きがみられるなかで、科学と政治はふたたび緊密に結びついてゆく。
本書は、ドイツ連邦文書館に収蔵されている一次史料から、植民地統治において医学が果たした役割と、第一次世界大戦後のいわゆる「ヴェルサイユ修正主義」との関係を論じる。いまだ眠り病が撲滅されていないという状況を鑑みるとき、そこで描かれる「植民地の過去」は、この問題が単にドイツ史における逸話としては片づけられない広がりをもつことを示している。

序章 植民地支配における「幸福な原住民」

第1章 ドイツの眠り病対策――植民地版「特有の道」?
一 眠り病対策における「三つの選択肢」と国際協力体制の挫折
二 ドイツ植民地における眠り病対策
三 コッホの東アフリカ派遣の経緯
四 ドイツ領における眠り病感染地域

第2章 東アフリカにおける薬剤治療――「隔離政策」という幻想
一 強制措置の回避――ヴィクトリア湖沿岸における眠り病患者の「収容所」
二 植民地支配における「合理性」――タンガニーカ湖沿岸における「収容所政策」
三 「診療所」における治療
四 エールリヒの抵抗とアルゼノフェニルグリシン

第3章 ツェツェバエ対策――「代償行為」としての除草作業
一 現地住民の動員――成功体験から挫折へ
二 選択肢の消滅
三 英独協定締結後の現実
四 ベルギー領コンゴとの協力関係

第4章 トーゴの眠り病対策――現地住民・「首長」・イギリスという「関係性」
一 「眠り病委員会」の設置
二 「眠り病委員会」の苦悩
三 現地住民の反発
四 「首長」・「呪術師」・植民地官吏
五 イギリス領黄金海岸植民地との協力関係

第5章 トーゴにおける収容所――「正面突破」の薬剤治療
一 不徹底なツェツェバエ対策
二 眠り病患者の隔離と薬剤治療
三 薬剤治療――副作用、中毒作用、そして再発トリパノソーマとの闘い
四 帝国保健省「眠り病小委員会」の開催

第6章 カメルーンという「辺境」――多難な船出
一 前史――感染地域の特定
二 ノイカメルーン――「モロッコ危機」と眠り病
三 植民地の「外」からの支援――クライネのカメルーン派遣計画
四 「サンガ=ウバンギ森林会社」による資金提供の申し出
五 ドイツ植民地省の反応
六 「サンガ=ウバンギ森林会社」と独仏関係

第7章 カメルーンと眠り病――「見切り発車」のツケ
一 カメルーンにおける眠り病対策――アコノランガにおける隔離施設の建設
二 他の感染地域における収容所
三 眠り病患者の収容と治療――患者の発見
四 収容所における薬剤の人体実験
五 収容所における食糧難とハウサ商人
六 医師と患者と――断絶する「理解の地平」

第8章 戦間期ドイツの眠り病研究――特効薬「ゲルマーニン」をめぐって
一 ヴェルサイユ条約とドイツの「熱帯医療」
二 眠り病特効薬「バイエル205」の開発
三 植民地再獲得の要求と「バイエル205」
四 ナチズムと「植民地修正主義」――映画『ゲルマーニン』をめぐって

終章 植民地の過去をめぐる「二重の忘却」

註記
あとがき
地図・図版の出典一覧
文献一覧
人名・地名・事項索引

磯部裕幸[イソベヒロユキ]
著・文・その他

内容説明

本書は、ドイツ連邦文書館に収蔵されている一次史料から、植民地統治において医学が果たした役割と、第一次世界大戦後のいわゆる「ヴェルサイユ修正主義」との関係を論じる。いまだ眠り病が撲滅されていないという状況を鑑みるとき、そこで描かれる「植民地の過去」は、この問題が単にドイツ史における逸話としては片づけられない広がりをもつことを示している。

目次

序章 植民地支配における「幸福な原住民」
第1章 ドイツの眠り病対策―植民地版「特有の道」?
第2章 東アフリカにおける薬剤治療―「隔離政策」という幻想
第3章 ツェツェバエ対策―「代償行為」としての除草作業
第4章 トーゴの眠り病対策―現地住民・「首長」・イギリスという「関係性」
第5章 トーゴにおける収容所―「正面突破」の薬剤治療
第6章 カメルーンという「辺境」―多難な船出
第7章 カメルーンと眠り病―「見切り発車」のツケ
第8章 戦間期ドイツの眠り病研究―特効薬「ゲルマーニン」をめぐって
終章 植民地の過去をめぐる「二重の忘却」

著者等紹介

磯部裕幸[イソベヒロユキ]
1975年、川崎市生まれ。1999年、東京大学教養学部教養学科卒業。2001年、東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修士課程修了、2008年、ドイツ・コンスタンツ大学歴史社会学部博士課程修了(Ph.D)。現在、秀明大学学校教師学部准教授。専門は、ドイツ近現代史・人種主義の歴史・グローバルヒストリー研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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BLACK無糖好き

17
[アフリカ眠り病]:トリパノソーマ病、ツェツェバエを媒介に感染し、嗜眠性の髄膜炎を起こし死に至る。近代医学でも制圧できていない。◇本書は19世紀末から20世紀初頭でのアフリカ大陸におけるドイツの植民地政策を検証し、この病の克服にいかに取り組んだかを明らかにすると共に、「支配と被支配」の問題も浮上させている。第一次世界大戦後に開発した特効薬もヴェルサイユ体制の打破を主張する「植民地修正主義」の流れに巻き込まれていく。植民地の「熱帯医学」と帝国の歴史をシンクロさせ、読む者に独特の視点を提供してくれる。2018/11/28

shi5253

0
アフリカ睡眠病とヨーロッパ植民地の関係を書いたもの。熱帯医学の勉強会のために読み始めたが、睡眠病の過去の流行状況やその時の現地の様子が学べただけでなく、その背景にある植民地政策と医師・医療の関係について知ることができた。 現在では、熱帯医学は熱帯感染症の克服やグローバルヘルスなどのキーワードで語られそうだが、この時代では植民地政策の一部としてのものだと認識だったというのが大きな発見。 これを読んでいた獣医学の研究者の先生は尊敬しています。 もっと熱帯医学の変遷について勉強したいと思った。2023/05/08

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