大人の本棚
女の二十四時間―ツヴァイク短篇選

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  • サイズ B6判/ページ数 245p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622085010
  • NDC分類 943
  • Cコード C1397

出版社内容情報

好評を博した『チェスの話』につづく第二弾。リヴィエラのホテルから若いフランス人の男と人妻がとつぜん駆落ちをする。この事件の賛否をめぐって激しい議論が起こり、イギリス貴族の未亡人が弁護にまわる。この謎を中心に、或る貴婦人の情熱の二十四時間を描く代表作。他に、「或る職業が思いがけなくわかった話」「圧迫」の二篇を収録。

内容説明

女というものは生涯のうちに秘密にみちた力に身をまかせてしまう時がある。デーモンに翻弄される女性の心理を克明に描いた名作、他二篇。傑作選の第2弾。

著者等紹介

ツヴァイク,シュテファン[ツヴァイク,シュテファン][Zweig,Stefan]
作家。1881年、オーストリアのウィーンに、ユダヤ系の裕福な紡績工場主の息子として生れる。ウィーン大学で哲学を学び、第一次世界大戦中は、ロマン・ロランとともに反戦平和の活動に従事する。大戦後は、ザルツブルクに住み、数々の作品を発表。ヨーロッパの多くの作家、芸術家と親交を結ぶ。ヒトラーの政権掌握後、ロンドンに亡命。その後アメリカ、さらにブラジルへ移住するが、1942年、第二の妻とともに自ら命を絶つ

辻〓[ツジヒカル]
1923年に生れる。東京大学文学部ドイツ文学科卒業。東京大学名誉教授。ミュンヘン大学名誉評議員

大久保和郎[オオクボカズオ]
1923年東京に生れる。慶應義塾大学文学部中退。独・仏文学を専攻。1975年歿

池内紀[イケウチオサム]
1940年、兵庫県姫路市生れ、ドイツ文学者、エッセイスト(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

buchipanda3

101
「二十四時間というものは、ひとりの女の運命をすっかり決定してしまえるもの」。そんな言葉を示す出来事が語られた表題作を含むツヴァイクの短篇選集。どの話も人間の心理観察に長けた話ばかりで興味深く読めた。人は時折、自分の意思を超えた突拍子もない行動をしてしまうことがある。それは相手の男性を救ったことの充足感ゆえか、はたまた自らの好奇心の暴走(著者の職業柄)のため、そして権力や世間という見えない圧への負い目からか。いずれも誰もが体験しそうな危うい心理。「圧迫」の妻の心からの言葉たちは著者の本物の叫びなのだと思う。2023/08/21

藤月はな(灯れ松明の火)

82
表題作は賭け事で投げ撥になった青年を引き止めるために一夜を過ごした未亡人。夫人が到達した境地が『マザリング・サンデー』とそっくりだ。しかし、こちらの方が女の揺るぎない自負心が恋によってぐらつき、変化する描写が見事だ。映画化もされているそうで観てみたいな。「或る職業・・・」は摺りを観察する語り手の喜怒哀楽が滑稽だ。だが憐れみからの助けは相手の尊敬を害するのだ。「圧迫」での男は「嫌だ」と思いながらも周囲の目を気にしたり、安楽さから不条理に唯々諾々と従うが、女の方が抵抗する為の意思を持っているという描写が痛快。2018/10/25

りつこ

24
イギリス人の上品な老婦人が語る秘密。それまでの自分の人生を燃え尽くすほどの情熱と恥辱。彼女自身が深い闇のなかにいたからこそあのような大胆な行動にでたのだろう。心理描写がとても細やかで丁寧なのでまるで自分のことのように感じられて、胸が苦しくなった。二話目のユーモアにはにやり。三話目は通知が届いてからの主人公の追い詰められていく心情がとてもリアルで苦しかった。静かな語り口だけどうちに秘めた激しさが伝わってきてとても面白かった。2012/08/27

ぱなま(さなぎ)

18
収録作『圧迫』は反戦の信念を持ってスイスへ逃れたはずが、徴兵の令状を受取り苦悩する芸術家の話。同じ死ぬなら信念に従って死んだほうがいいと、頭では思っていても人は大きなものに従う方に進みたくなってしまう。ミルグラム『服従の心理』を思い出したけれど、第一次大戦の時点でツヴァイクはその人間の本質を見抜いていた。主人公の妻が、あれだけ言葉を尽くして身を投げ打って引き留めても彼を止められず、結局彼は負傷兵の惨状を目のあたりにするまで我に返ることができなかった、というのは言葉の無力さを物語っているようで悲しい。2020/10/31

ハレ

14
黒柳徹子さんが「私はツヴァイクが好き」とテレビでよく言っている。その言葉を聞いて、ずっと昔に処分してしまったツヴァイク作品のうちこの短編集を取り寄せてみた。‘ある瞬間に人をみまうデーモン(超自然的な力)の誘い’というツヴァイクの終生のテーマで掘り下げて語っていく物語。やはり感想は変わらずじんわりと沁みていく。ユダヤ人のツヴァイクは亡命先のブラジルで1942年に「我々の世界が消えていく」という言葉を残して自殺している。デーモンの誘いはいつでもどこにでも誰にでもある。2023/02/28

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