始まりの本
沈黙の世界

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 270p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622083726
  • NDC分類 104
  • Cコード C1310

出版社内容情報

『われわれ自身の中のヒトラー』のピカートによる古典的名著。人間が自立的・主体的な存在であるための「沈黙」の意味を探る。

『われわれ自身の中のヒトラー』に並ぶ、著述家M・ピカート(1888‐1965)の主著。言葉、歴史、芸術など様々な事物と「沈黙」との関わり、人間が自立的で主体的な存在としてあるための「沈黙」の意味を探る。「騒音語が万事をならし、均等化してしまう」世界はいかにして生まれてくるのか、緊密な筆致で綴る。新版刊行にあたり、エマニュエル・レヴィナス「マックス・ピカートと顔」を付す。

まえがき 
沈黙の相(すがた) 
始原の現象としての沈黙 
沈黙からの言葉の発生  
沈黙と、言葉と、真理 
言葉における沈黙  
沈黙と言葉との中間にある人間  
沈黙におけるデモーニッシュなるものと言葉 
言葉と身振り  
古代の言葉 
「自己」と沈黙  
認識と沈黙  
事物と沈黙  
歴史と沈黙 
形象と沈黙 
愛と沈黙 
人間の顔と沈黙  
動物と沈黙 
時間と沈黙  
幼児と、老人と、そして沈黙 
農夫と沈黙  
沈黙における人間と事物  
自然と沈黙  
詩と沈黙 
詩と沈黙――例―― 
美術と沈黙  
騒音の言葉  
ラジオ  
沈黙の残部  
病と死と沈黙  
沈黙なき世界  
希 望  
沈黙と信仰 

訳者あとがき  

内容説明

沈黙は言葉の放棄と同一のものではない。沈黙は決して、言葉が消失したあとに取り残されたような、見すぼらしいものではない。沈黙は或る種の全きもの、自己自身によって存立する或るものなのである。沈黙は言葉とおなじく産出力を有し、言葉とおなじく人間を形成する。ただ、その程度が違うだけである。沈黙は人間の根本構造をなすものの一つなのだ。(…)読者はこの本によって、言葉を軽視するような誤った結果にたち到ってはならない。人間が人間として存在し得るのは、言葉によるのであって、沈黙によるのではないのである。

目次

沈黙の相
始原の現象としての沈黙
沈黙からの言葉の発生
沈黙と、言葉と、真理
言葉における沈黙
沈黙と言葉との中間にある人間
沈黙におけるデモーニッシュなるものと言葉
言葉と身振り
古代の言葉
「自己」と沈黙〔ほか〕

著者等紹介

ピカート,マックス[ピカート,マックス] [Picard,Max]
1888‐1965。ドイツのシュヴァルツヴァルトに生まれる。ハイデルベルク大学助手を勤めた後、ミュンヘンで開業する。スイスのルガノ湖畔に居を移し文筆活動を続けた

佐野利勝[サノトシカツ]
1918年大阪府に生まれる。1941年京都帝国大学経済学部卒業。1946年京都大学文学部卒業。京都大学・滋賀医科大学名誉教授。2006年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

内島菫

23
保守的、宗教(キリスト教)的な立場からの現代(1948年当時)批判であるが、これは思想書や哲学書としてではなく詩的な思索書として読まれるべきだろう。沈黙に対する考察には見過ごしてはならない言葉が随所にみられる。ただ、功利主義や都会の騒音、機械化に対する批判はまだしも、ラジオに対する執拗な非難は私にはどこか言いがかりめいていて(そういう意味では面白いが)、途切れ途切れに寄せては返す波のような繰り返しには少し退屈した。都会人に対して農民を持ってくる予定調和的な調子は、 2019/12/01

春ドーナツ

16
本書は形而上学的な文章なので(詩的でもある)、「とっかかり」が欲しい。沈黙を具象化して論が展開されていくので、イメージを利用した方が本書に少しでも接近できるかも知れない。最初は「ブラックホール」を念頭に置いた。けれども多義的過ぎてうるさく感じる。宇宙空間を覆う「ダークマター」は観測された訳ではない。理論上の状況証拠のような「もの」だ。「沈黙の世界はダークマターで作られている」とても静かだ。鼓膜が痛くなる程に。後半部からはマーシャル・マクルーハンの「メディア論」の先駆けだよなと思いつつ頑張って読み進める。2018/09/06

フウ(風)

3
「沈黙は決して消極的なものではない。沈黙とは単に『語らぬこと』ではない。沈黙は一つの積極的なもの、一つの充実した世界として独立自存しているものなのである。」この冒頭の部分からして、沈黙を無としてではなく、存在するものとして、語っている。老荘思想の「無用の用」にも通じ、現在の音に溢れた世界に、大変興味深い一冊。2014/04/04

もくたつ(目標達成)

2
沈黙についての考察。2017/11/25

左手爆弾

2
こういう本を真に受けてはいかん。「現代は騒音語の世界で、ラジオからギャンギャンうるさい音が鳴っている、大切なのは沈黙だ」と全体を通して言われている。それ自体は何も否定しない。しかし、では沈黙とは何か、いかにして沈黙に至るのかと言われれば、何も書いていない。後半にあるのは「祈り」という信仰の回復の訴えであり、それが響く人は限られるだろう。こうした主張は我が国の言論界でもかなり多いのだが、相手を否定しておいて、自分の主張の決定的な論拠や実感は宙吊りにしておく。これは卑怯だと思う。2015/08/12

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/7952461
  • ご注意事項

最近チェックした商品