始まりの本
望郷と海

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  • サイズ B6判/ページ数 304p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622083566
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C1336

出版社内容情報

1945年の敗戦とともにソ連軍に抑留され、8年間のシベリア収容所体験をへてきた著者は、帰国後、戦後日本社会の変貌に戸惑いながら生き延びた者として当時の体験を苦闘しつつ言語化していった。「ペシミストの勇気」はじめ本書の各編はすでに現代の古典となっている。戦後日本に著者は何をみたか。生きる意味を追求した、日本人による『夜と霧』とも評される書。

内容説明

「人は死において、ひとりひとりその名を呼ばれなければならないものなのだ」。シベリアでの収容所体験の日々と戦後日本社会に著者は何をみたか。

目次

確認されない死のなかで―強制収容所における一人の死
ある“共生”の経験から
ペシミストの勇気について
オギーダ
沈黙と失語
強制された日常から
終りの未知―強制収容所の日常
望郷と海
弱者の正義―強制収容所内の密告
沈黙するための言葉
不思議な場面で立ちどまること
『邂逅』について
棒をのんだ話
肉親へあてた手紙―一九五九年一〇月

一九五六年から一九五八年までのノートから
一九五九年から一九六二年までのノートから
一九六三年以後のノートから

著者等紹介

石原吉郎[イシハラヨシロウ]
詩人。1915年11月11日、静岡県伊豆土肥村に生まれる。1938年東京外語ドイツ語貿易科卒業、大阪ガス入社。翌39年応召、翌1940年、北方情報要員第一期生として大阪露語教育隊へ分遣、鹿野武一に会う。41年、関東軍のハルビン特務機関へ配属。敗戦後、シベリア各地の収容所を転々とする。49年2月には、反ソ・スパイ行為の罪で重労働25年の判決を受ける。スターリン死去にともなう特赦で1953年12月に帰国。翌54年に『文章倶楽部』に詩の投稿をはじめ、翌年には詩誌『ロシナンテ』を創刊、続々と詩を発表する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

扉のこちら側

88
2016年974冊め。再読。フランクルの『夜と霧』、レーヴィの『今でなければいつ』『元素追想』等、世界に名だたる収容所文学に肩を並べる名作だと私は評価しているのだが、今いち知名度が低く残念である。フランクルが精神科医として、レーヴィが科学者としてアウシュヴィッツを追想したのに対して、日本人の詩人としての目でシベリア抑留を描いた名作。今回は三章のノートに強く引き付けられた。名文が多すぎて付箋をつけた箇所すべては引用できないほど。2016/11/07

中玉ケビン砂糖

41
、再読 、「人は死において、ひとりひとりその名を呼ばれなければならないものなのだ」自分にとって最重要な本のひとつなので、みすずから復刊したのは(いい値段はするけれど)とてもありがたかった。以前のものはちくまから出ていたが絶版になってしまい、古本は高いし、図書館で借りたとしても常時手元に置いておけないのでイライラしていたのだ、卒論で「旧日本軍兵士のシベリア抑留体験」、ひいては「ジェノサイドがもたらす極限状況下での人間の行動」をテーマに据え置いていたので、その手の本は即買いするようにしている2013/09/05

34
シベリア抑留を経験した詩人・石原吉郎によるエッセイ・ノートの著作群。収容の中で焦がれた海が、日本が、どのように彼の内側で喪失し、絶望や失語、沈黙という形へ置き換わっていったのか。最晩年のノートにある、「生きる根拠」を探す石原の姿に胸が痛む。人間としての部分を簒奪された彼の彷徨は、読む者すべてを醒まさせるしずかな力をもつ。2021/04/16

みねたか@

27
収録作は石原吉郎詩文集で既読。それでも衝撃は変わらない。8年ものシベリア抑留。特に「生涯の事件と言えるものは悉く起こってしまった」という、判決,移送,森林伐採労役の時期の体験は想像に余りある。しかし,本書のすごみは体験自体の過酷さより,敗戦後の死にざまから生きざまへの転換,被収容者がたどり着く荒涼とした寂寥,苦痛の記憶を取り戻していく過程の苦しみ、等の精神の崩壊過程を徹底した客観視と研ぎ澄まされた詩人の言葉により紡いだことにある。あらためて本書を「始まりの本」シリーズとして復刊したみすず書房の慧眼に感服。2018/10/17

ステビア

22
自らに絶望を課し続ける凄絶なまでのマゾヒズム。それとは対照的にユーモラスともいえる掌編「棒をのんだ話」が印象に残る。2020/08/11

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