出版社内容情報
生活の雑音が宗教や経済の歯車にのり音楽産業へと編成されていく過程を政治経済学的視点から鮮かに描出。未来をも予言する鋭い音楽論
内容説明
音楽の変容を通し描出される、消費社会/文化の近未来図。アタリ的/根源的音楽史観。
目次
聴く(権力の雑音;資本以前の音楽家;音楽による理解)
供える(音楽空間―供犠のコードから使用価値へ;コードの力学;音楽と貨幣)
演奏する(演奏、交換、ハーモニー;スターの系譜学;反復への流れ)
反復する(録音の定位;二重の反復;反復、沈黙、そして供犠の終焉)
作曲する(亀裂;作曲の相互交通的価値)
著者等紹介
アタリ,ジャック[アタリ,ジャック][Attali,Jacques]
1943年アルジェに生れる。1956年アルジェリア戦争勃発と共にパリに移る。理工科学校、パリ政治学院、鉱山大学校、国立行政学院といったフランスのエリート校を卒業、国務院審議官を勤め、同時に、理工科学校、パリ第九大学で教鞭をとる。その後、当時のミッテラン社会党第一書記の経済顧問に就く。ミッテラン大統領の誕生と共に、大統領特別補佐官となる
金塚貞文[カネズカサダフミ]
1947年東京に生れる。早稲田大学文学部中退。英・仏語からの各種翻訳に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
12
雑音を取り入れることで音楽の域は広がる。バッハもベートーヴェンもマーラーも灯台には雑音だと思われたものを取り入れて作曲を成す。ビートルズやヘンドリックスもそうである。今では、彼らの音楽を「雑音」だとみなす者はいない。雑音→音楽の歴史的運動と、音楽の貨幣化の運動を本書は重ねているように思うが、貨幣の扱いについては明確になっていないので再読しないとわからない。生理的に雑音と思われるものから作り上げる点で、音楽は最も非―動物的なものに思えてきた。動物が音楽をひどく嫌うという話を聞いたことがある。2024/06/07
kthyk
12
「音楽は予言的であるが故に、来るべき時代を告知する。」なんとも魅力的な書き出しだ。章立ては「聴く」「供える」「演奏する」「反復する」「作曲する」。音楽の理論書ではないので、この分類は音楽を直接的に説明するものではなく、むしろ時系列あるいは歴史的分類。しかし、音楽史ではなく経済史いや情報史でもなく。>沈黙>騒音>音楽という音楽的世界の消費と需要と生産、その昨日・今日・明日。個人的な関心は「反復する」のあたりから。ー>2020/11/18
左手爆弾
2
「聴く」という働きからの哲学/政治/経済論と読むべきだろう。世界にある秩序と無秩序を音を通してみることで、その歴史と本質が浮かびあがる。音楽においては一方で反復が重要であるが、それだけでは退屈するから新たな旋律への飛躍が必然となる。音楽家は両義的である。一方では追従者であり支配者に従って社会を再生産し、他方では破壊者であり既存の秩序にとらわれない。そうした音楽の持つ両義性は過去から今日まで変わらないが、記号として音楽が売り買いされるようになることは大きな変化である。2016/10/31
doji
2
次に読もうと思っていたベンヤミンの議論と繋がるであろう複製の話であったり、著作権、資本主義の中での音楽・音楽家のあり方についての議論はすごく興味がわいた。全体的にはアタリ的言い回しに苦戦してしまった。2016/05/09