出版社内容情報
サルトルの『嘔吐』を『むかつき』と改題して、引き籠もり、ニート、「キレル」など現代社会の諸問題を新解釈から考察する。
内容説明
「さあ、きみの先輩を紹介しよう。きみのお父さん、いやお爺さんが一生懸命読んだ本の主人公だ。書いたのはジャン=ポール・サルトルという哲学者」…引き篭もり、ニート、「キレる」といった現代社会の問題に呼応することで、二十世紀フランス文学の名作が、新たな命を生き始めているようです。新釈『嘔吐』の世界へようこそ。
目次
第1回 正常異常者の屈折光学(投壜通信―来ない者に;チョーむかつく;サルトルって誰? ほか)
第2回 ぼくの居場所は?(驚異;クローズアップ;背後から抱かれて ほか)
第3回 「むかつき」な人々(おせっかいな単独者;畜群性の諸相;共依存とRPG ほか)
著者等紹介
合田正人[ゴウダマサト]
1957年生まれ。明治大学教授。専門は十九・二十世紀のフランス・ドイツ思想、近代ユダヤ思想史。「生理学」「心理学」「精神分析」「社会学」など十九世紀を通じて醸成された人間科学の諸相を分析し、そこに孕まれた諸問題の現代性を考察している。加えて十七世紀以降のユダヤ人問題とも取り組んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
72
この作品についての本は最近皆無に近く、物珍しさで読んだ。中高生向けシリーズの小説『嘔吐』解説本。正直良くわからないところの多い小説を、近年の研究や当時サルトルに影響を与えたとされる作品などを解説。なによりも、『むかつき』と言い直し、現代の若者に理解しやすく寄せる意図があるがうまくいっているかと言われたどうかと。言及など散漫に感じるところもあり、誤読を恐れず言い切ることの難しさを感じつつ読み終えた。2019/09/25
さえきかずひこ
11
様々な哲学を援用して、サルトルが1938年に発表した『むかつき』(La Nausée)を批評する一冊。ハイティーン向けの哲学読みものなので、大人の読者にはすぐ読めるでしょう。人文書院の協力で『嘔吐』本文の一部が巻頭に転載されているのは嬉しい(1994年刊行の白井浩司訳)。2018/05/21
cybermiso
3
普通の小説として「嘔吐」を読んでいたからこんなにテーマや思想が隠されていたことに驚いた。全体的に難しかった。後半の、家族とか贈与とか性のところが、どういうように全体に繋がっているのかがわからなかった。他の本も読みつつ理解できたらいいなと思った。実存への「むかつき」に対しては今風な例も多く取り上げられ、雰囲気を掴めた気になれた。2014/03/24
ラウリスタ~
3
前半はまったくもってしょうもない本か、と思うものの、後半から本題に。嘔吐は日本語でもフランス語でも読んでいるからある程度読んでいるつもりではあったものの、やはり研究として本を読むということと趣味としての読書の違いを痛感。特に20世紀の作品は重い歴史を背負っているだけあって裏の意味を考え続けながら読まないといけない。大好きなサルトルでも、やはり文学的面が好きなのであって、思想的な面にはまったく踏み込んで読めていないのでぼちぼち勉強し始めよう。2010/12/01
抹茶ケーキ
2
簡単そうな文体とは裏腹に全体的な論旨がすごくつかみづらかった。結論の「嘔吐」の感覚は、現実や自分をとらえ直す試みであるっていう筆者の主張(というかかなり広く言われていることだと思うけど)を考えると、何もしないというニート的な生き方にも積極性(=冒険性)があるってこと何だろうか。2015/10/23




