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出版社内容情報
ツヴァイクが亡命の途上で書いた最後の小説。ナチス圧制下ホテルに軟禁されたオーストリア貴族の心理を描いた、興味津々の名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
103
ツヴァイク初読みだが、その軽妙な語り口に惹かれた。人間の滑稽な一面を巧みに描き出し、それがもたらす悲哀に対して現実的ではあるが愛すべき情感の眼差しで見つめているよう感じられた。富豪ではない版画蒐集家、書物のみで生きる書痴家、不倫露呈の不安につき纏われる妻、正気を保つためにチェスの世界に囚われた男。望む望まないの違いはあるがそれぞれが一つの事柄にのめり込み、その常識を超えた姿は奇妙へと変貌する。ただそれは誰もがなり得り、人間らしい姿なのだ。また戦争が、本来嬉々の才能を哀しみに変えてしまうやるせなさも残った。2023/07/05
アキ
74
4編の短編。「目に見えないコレクション」第一次世界大戦後のドイツのハイパーインフレで既に売り払われた絵を盲目の邁集家は古美術商に自慢する様が切なく滑稽。「書痴メンデル」本を読むことだけにすべてを捧げ、ナチスに拿捕され、いつの間にか忘れ去られる存在に。「不安」夫を裏切り若いピアニストに浮気をする侯爵夫人をゆする女は弁護士である夫の差し向けた罠であった。「チェスの話」高名なチェスの名人に25年間頭の中だけでチェスを行ってきたB博士が挑むチェスの結末はいかに。児玉清がこよなく愛した。Toi booksで購入。2020/04/05
NAO
64
シュテファン・ツヴァイクは、ウィーンに生まれ、第一世界大戦から第二次世界大戦の間のインフレと政情不安定な時代を生きたユダヤ人作家。本作品の「目に見えないコレクション」と「書痴メンデル」は、その時代だからこその悲劇を描いている。この2作品の主人公は「ひとつのことだけに情熱をかける」特異な人物で、こういった人々は普通のときなら呆れられたりなどしながらも愛すべき変人として扱われたり、「書痴メンデル」のように一部の人たちから尊敬されたりもするような人々だ。だが、社会情勢が悪化すると、彼らは簡単に零落してしまう。2022/03/21
藤月はな(灯れ松明の火)
52
初っ端から「目の見えないコレクター」の幸福にガツンとやられました。なんだろうな、この割り切れないけどその幸せが崩れないことを祈りたい気持ちは・・・。「書痴メンデル」は蔵書家、読書家の方は心当たりがあってドキリとなされるのかもしれません。「不安」は自分の不倫を知っている女に付き纏われる奥方の話です。私はなぜか「恋人が自分への貢物のためにお金を借りに行ったのが自分の夫だった」という逸話を描いたプーシキン美術館所蔵の絵画を連想してしまいました^^;2013/05/29
kazi
34
これは大当たりでした。ツヴァイクが何者なのかも知らないままに、タイトルの「チェス」という言葉に惹かれて購入し、長い間本棚で埃をかぶっていた本です。今更読み終えて一言。めちゃめちゃ面白かった!この短編集ではモノマニアというのか、何かに偏執的に熱中する人間を描いた作品が多かったですね。全編読み易く良質な作品ばっかりだったが、表題作「チェスの話」が一番面白かったです。主人公の偏執的な人物像や精神が崩壊していく様子は元世界チャンピオンの“ボビー・フィッシャー”をモチーフにしてるのかな?2021/03/04