磁力と重力の発見〈1〉古代・中世

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磁力と重力の発見〈1〉古代・中世

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  • サイズ B6判/ページ数 304,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622080312
  • NDC分類 420.2
  • Cコード C1340

出版社内容情報


第30回 大佛次郎賞(朝日新聞社)受賞!
第57回「毎日出版文化賞」受賞
第1回 パピルス賞受賞

近代物理学成立のキー概念は力、とりわけ万有引力だろう。天体間にはたらく重力を太陽系に組み込むことで、近代物理学は勝利の進軍の第一歩を踏み出した。

ところが、人が直接ものを押し引きするような擬人的な力の表象とちがって、遠隔作用する力は〈発見〉され説明されなくてはならなかった。遠隔力としての重力は実感として認めにくく、ニュートンの当時にも科学のリーダーたちからは厳しく排斥された。むしろ占星術・魔術的思考のほうになじみやすいものだったのである。そして、古来ほとんど唯一顕著な遠隔力の例となってきたのが磁力である。

こうして本書の追跡がはじまる。従来の科学史で見落とされてきた一千年余の、さまざまな言説の競合と技術的実践をたどり、ニュートンとクーロンの登場でこの心躍る前=科学史にひとまず幕がおりるとき、近代自然科学はどうして近代ヨーロッパに生まれたのか、その秘密に手の届く至近距離にまで来ているのに気づくにちがいない。

6年前の著書『古典力学の形成』のあとがきで遠回しに予告されていた大テーマ、西洋近代科学技術誕生の謎に、真っ向からとりくんだ渾身の書き下ろし、全3巻。


山本義隆(やまもと・よしたか)
1941年大阪に生まれる。1964年東京大学理学部物理学科卒業。同大学院博士課程中退。現在 学校法人駿台予備学校勤務。著書『知性の叛乱』(前衛社、1969)、『重力と力学的世界――古典としての古典力学』(現代数学社、1981)、『熱学思想の史的展開――熱とエントロピー』(現代数学社、1987)、『古典力学の形成――ニュートンからラグランジュへ』(日本評論社、1997)、『解析力学』Ⅰ・Ⅱ(共著、朝倉書店、1998)ほか。編訳書『ニールス・ボーア論文集(1)因果性と相補性』『同(2)量子力学の誕生』(岩波文庫、1999-2000)。訳書 カッシーラー『アインシュタインの相対性理論』(河出書房新社、1976、改訂版、1996)、同『実体概念と関数概念』(みすず書房、1979)、同『現代物理学における決定論と非決定論』(学術書房、1994)、同『認識問題(4)ヘーゲルの死から現代まで』(共訳、みすず書房、1996)ほか。

内容説明

「遠隔力」の概念が、近代物理学の扉を開いた。古代ギリシャからニュートンとクーロンにいたる科学史空白の一千年余を解き明かす。

目次

第1章 磁気学の始まり―古代ギリシャ
第2章 ヘレニズムの時代
第3章 ローマ帝国の時代
第4章 中世キリスト教世界
第5章 中世社会の転換と磁石の指向性の発見
第6章 トマス・アクィナスの磁力理解
第7章 ロジャー・ベーコンと磁力の伝播
第8章 ペトロス・ペレグリヌスと『磁気書簡』

著者等紹介

山本義隆[ヤマモトヨシタカ]
1941年大阪に生まれる。1964年東京大学理学部物理学科卒業。同大学院博士課程中退。現在、学校法人駿台予備学校勤務
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ダイスケ

92
磁石が鉄を引きつけることを当たり前として認識しているけれども、磁石が接触もせずに鉄を動かすことを説明することは私には難しい。本作1巻では古代ギリシャから始まり、13世紀にロジャー・ベーコンとペトロス・ペレグリヌスまで、現代の私たちが享受している科学技術がどのように説明(理解)されてきたのか、ヨーロッパの歴史を踏まえて説明されています。ロジャー・ベーコンの登場まで長く感じましたが、ここから2巻のルネッサンス時代でどのようにドライブがかかるのか楽しみです。2024/02/18

KAZOO

79
山本義隆先生の本を読み始めました。エントロピーの本は途中で挫折しています。これは数式もあまり出ずにギリシャ・ローマ時代からの物理に関するものを過去の文献を渉猟してまとめ上げた大作です。全3巻で第1巻はルネサンスまでの歴史を様々な文献などから磁力などについて面白い考え方などで楽しく読めます。駿台の先生で、受験者用の教科書も書かれていますが本当は東大の理学部長くらいには最低でもなれたはずでもったいないとしか言いようがありません。2015/08/31

新平

11
 前半は読み進むのが苦痛。古代ギリシャの名だたる自然哲学者が磁力を‟こじつけ”て説明することに辟易。しかしながらこの態度こそ、自分たちが今わかっている理屈で、物事を説明しようとする還元的な態度で、デカルトの機械論につながる系譜だそうだ。もう一方が、磁力を説明不可能な事実としてそのまま受け入れることで、ニュートンの重力理論の立場となる。後者は、磁力をいわば超自然的な魔法の一つとしてとみなす姿勢に連なり、鋼の錬金術師やハリポタに出てくる「賢者の石」を探し求めることになるわけだ。後者は前者を空想的で恣意的な仮説2016/06/19

garth

6
「遠隔力」発見に向けて進んでいく人類の知の歩みだが、ついに実験的科学にとりくむペレグリヌスの登場により一気に視野が開ける。シチリア王国とフリードリヒ二世の栄華には、押さえた筆致ながら筆写の並々ならぬ思い入れが感じられて興味深い。2010/03/03

maqiso

5
古代ギリシャでは磁石と磁力は合理的な説明を必要とするものだったが、古代ローマから中世西欧では神秘的か魔術的なものの例として挙げられ、中世の終わりにようやく定量的な観察が行われた。中世よりも古代の方が優れた思想を持っているが、権威ある古典を否定しないと近代的な発展はできないことが分かる。実感できるほぼ唯一の遠隔力である磁力が、体験できない驚異や奇跡を正当化するものになっていったのが面白い。2019/11/08

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