lettres
秋の四重奏

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  • サイズ B6判/ページ数 242p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622072164
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

ロンドン、全員ひとり暮らしの男女が四人。共に、同じ会社に勤め、定年間近の年齢である。まず女性二人が退職する。そのうち、マーシャがやがて亡くなり、レティは老後の生活になんとか順応しようと努める。男たち、エドウィンとノーマンはまだ勤めているが、まもなく会社を去ることになるだろう。こうした四人の平凡な日常風景―職場のやりとりや昼食、互いのささやかな思いやりやすれ違い、ヴァカンスやクリスマスの計画、遺産相続などが淡々と描かれるだけで、何であれ、劇的な事件には発展しない。マーシャの死さえも日常生活の中の一齣にすぎない。これら凡庸な四人のありふれた「老い」が、この味わい深い上質のユーモアに満ちた「コメディ」の核心をなしている。われわれはここで、静かに奏でられた、ふつうの現代人の、孤独な「生と死」の意味あるいは無意味に向き合うことになる。温厚かつ辛辣な作風によって、「現代のオースティン」という声価を得た英国作家の代表作。

著者等紹介

ピム,バーバラ[ピム,バーバラ][Pym,Barbara]
1913‐80。英国シュロプシャに生まれる。オクスフォード大学在学中に第一作『なついた羚羊』を執筆(50年刊行)。海外での軍の仕事の後、母親の看護のため故郷に帰る。母の死後、ロンドンの国際アフリカ研究所に勤務しながら、小説を発表。61年までに6作を発表し、“20世紀のオースティン”という声価を得たが、以後文壇から姿を消す。しかし77年、TLSのアンケートで過小評価とされたのをきっかけにカムバックを果たし、没後その文学的評価はいよいよ高い

小野寺健[オノデラタケシ]
1931年横浜に生まれる。1955年東京大学文学部英文科卒業、1957年同大学大学院修士課程修了。現在日本大学教授、文化学院講師、横浜市立大学名誉教授。英文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

星落秋風五丈原

31
エドウィン、ノーマン、レティ、マーシャは同じ職場で働く同僚。退職を目前に控えるおひとりさま60代で既婚経験があるのはエドウィン一人だけ。過去においても4人の間で恋愛がもつれることはなく、友人としての日々を過ごしてきた。やがてマーシャとレティが先に退職の日を迎える。その時の取締役補佐の言葉が「だれも正確にはお二人が何をなさっているのか、いやなさってきたのかを知らない」などディスっていて爆笑ものだが、ひとしきり笑った後に過るのは寂しさだ。高齢者自身の思いと社会の見方はこれだけ違う!というパターンは他にもある。2018/04/06

みつ

27
表題の『秋の四重奏』は、いわば「人生の秋」を迎えた同じ会社に勤める4人の男女(みんなひとり暮らしで近くに親戚もいない。p9)の、緩やかな関係の象徴か。かつての淡い恋心も、友人の結婚へのかすかな嫉妬も、全てが淡く描かれ、その中に死と孤独が忍び寄る。エリザベス女王の即位25周年が話題になる、サッチャー政権の直前の時代。斜陽国と言われつつも年金生活の心配はなさそう。二人は定年で会社を去り、うちひとりとは唐突な別れを迎えるが、会社の同僚関係が解消されても、緩やかなつながりは多分これからも続いていくのだろう。➡️ 2022/10/30

ほほほ

22
1970年代のロンドン。何をしている会社なのかはわからないけれど、書類の作成や管理をするのみというような部署で働く定年間近の冴えない(?)男女4人の毎日。淡々としていて起伏はほとんどなく、ディテールのみで成り立っているような物語。退屈に感じる人も多いかもしれないけれど、わたしはとても好みでした。ちびちびと読み、読書の愉しさを大いに満喫しました。大満足でした♡︎2017/03/25

きりぱい

12
イギリスの定年制はそれとして、60代4人だけの部署というのもすごい。そのうち女性2人が定年間近。よく言えば惜しい仕事振りで後任は見つかっておらず、悪く言えばもういらない職場。どんな!そんな4人の動静は老人パワー炸裂でもなく単調なものの、それぞれに重大な関心事はあり、おおよそピントのずれた気の回し合いに、物悲しくも皮肉な笑いが潜んでいる。情と世知辛さが同居し、孤独だけど憐れみはお断りと、『秋の四重奏』という美しげなタイトルは、すっかり『枯れかけの不協和音』となり・・それでも不思議と軽妙な余韻。2011/02/22

ロピケ

9
訳者あとがきで小野寺さんが指摘されているとおり、ピムさんの小説は教会周りの事がかなりの割合で含まれてくるので、これまであまり翻訳がなされなかったのだろうなあと、彼女の作品2作目を読んで納得。読んでみて、今の日本の「無縁社会」ということが想起され、決して古くない、むしろ今の日本だからこそ骨身にしみる内容かもしれない。私にとってはやはり読むのが楽しい作家です。これで、著者の翻訳の作品読み終わってしまった。他の作品も翻訳が出ないかなあ~。ピム復活の原因となった『タイムズ文芸付録』のアンケート文も読んでみたい。2011/02/11

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