出版社内容情報
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本書は、ポピュラー音楽のさまざまな美学や、スタイルの変遷を緻密に分析し、音楽産業やミュージシャンの創造現場の考察、聴き手の社会学的分析等を通じて、ポップ・ミュージックにおける創造性を追究した意欲的な試みである。剽窃とのぎりぎりの境界で成立するポップの創造現場に踏み込んだ論考は、研究・分析する立場の人にも、愛好者にも、そして、この産業にかかわる人びとにも深い関心を呼ぶものとなっている。
「ポピュラー音楽研究の問題点のひとつは、社会学者と〈音楽そのもの〉を分析する音楽学者のあいだの深淵である。両者のあいだの橋渡しをするためには、音楽学を厳密なやり方で学んで来なかった研究者にも、必要に応じて利用可能な、中間的な分析手法を早急に見いだす必要がある。本書のなかの音楽分析は、創造性の問題を解体するという役割を超え、音楽学者以外による音楽分析の方法論的な試みのひとつとしても意味を持つのかもしれない……」(「日本語版への序文」より)
ともすれば無批判に参照点とされるロックの時代を、特異な数十年と見なし、1930年代のスウィング・ジャズと現在のクラブ・シーンに通底する〈踊る身体〉に着目するなど、さまざまな斬新な視点が提出されている。ポップの新しい世紀を眺望する音楽社会学の最前線。いま、音楽創造を考えるうえでの重要な思考の集積となっている。
内容説明
市場、創造、演奏、ジャンル、テクノロジー―ポップ・ミュージックをめぐる枢要な問題を徹底分析し、ポップ新世紀における音楽の可能性と危機を論ずる。
目次
第1章 市場―魂を売る(アドルノ、等価性、市場;起業家と革新 ほか)
第2章 でっちあげ、見せびらかす―ミュージシャンの作為(音楽制作と創造半径;社会的作者の素養、そして声 ほか)
第3章 テクノロジー―手段的な楽器(オーディオ録音―発育不良の一例;散種と結晶化 ほか)
第4章 ジャンルの文化(ジャンルの響き;ジャンルの不可避性―フリーミュージックの事例から ほか)
第5章 ダンス音楽―やっぱりビジネス、それとも地上の楽園?(ダンス音楽―文脈;ハウスからドラムンベースまで―ジャンル的変成の二つの種類 ほか)
著者等紹介
トインビー,ジェイソン[トインビー,ジェイソン][Toynbee,Jason]
1953年、イギリス東部のサフォーク州で生まれ、中部の産業空洞化都市コヴェントリーで青年期を過ごす。昼は肉体労働にいそしみ夜バンド活動を行う生活を40代まで続けた後、コヴェントリー大学メディア研究学部で博士号(Ph.D.)取得。ミュージシャンの行為性を扱った博士論文は本書の下敷きとなった。リヴァプール大学ポピュラー音楽研究所(IPM)で教鞭をとった後、2004年秋からオープン大学社会科学部社会学科でメディア研究を教えている
安田昌弘[ヤスダマサヒロ]
1967年、千葉県生まれ。東京都立大学人文学部卒業後、英レスター大学マスコミュニケーション研究センター(CMCR)に留学、音楽産業のグローバライゼーションと日仏ヒップホップ文化の形成をテーマにした論文で博士号(Ph.D.)取得。研究関心はポピュラー音楽研究、グローバライゼーションとローカライゼーション、音楽と場所、都市空間とメディア空間の相関など。フランス在住
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感想・レビュー
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