出版社内容情報
「どうしても今晩のうちに出かけていって、あなたの心に語りかけずにはいられません」。マールブルク大学の教授ハイデガーは、入学まもない女子学生に一目で恋をし、1925年2月、この最初の手紙を書いた。
本書に切り取られた時間は50年。その間、三つの「高まり」の時期があり、本書もそれに沿って構成されている。第一期は最初の恋の体験。それはおずおずと内気だったアーレントにとって、「カプセル」内で孤立する自縛からの解放であり、ハイデガーにとっては、「デモーニッシュなもの」に掴まれた体験で、彼はこの力を『存在と時間』の執筆に創造的に活用することになる。
第二期(再会)は、時代の政治状況に起因する20年の休止期間を経て1950年から数年。とくにハイデガーの手紙は、この時期の彼の伝記的事実にかんする宝庫である。
第三期(秋)はアーレントの死まで、最後の10年。「人生からの引退」が双方の心を占め、基調底音は「静けさ」であった。アーレントの『精神の生活』はこの時期に構想されている。
ふたりにとって、「仕事」と「人生」がどれほど強く綯い合わされていたか、本書はそれを納得させてくれる。さらに、「判断の国の女王」(ルッツ)と「思索の国の王」のダイアローグは、20世紀精神史のなかでモザイク状だったふたりの肖像を完成させ、ヤスパースやメルロ=ポンティなどとの関係と布置についても、さらに多くを明らかにするだろう。
Hannah Arendt(ハンナ・アーレント)
1906年、ドイツのハノーファー近郊リンデンに生まれる。マールブルク大学でハイデガーとブルトマンに、ハイデルベルク大学でヤスパースに、フライブルク大学でフッサールに学ぶ。ナチス政権成立後(1933年)パリに亡命し、亡命ユダヤ人救援活動に従事。1941年、アメリカに亡命。バークレー、シカゴ、プリンストン、コロンビア各大学の客員教授を歴任、1967年、ニュー・スクール・フォア・ソーシャル・リサーチの哲学教授。1975年歿。 著書『アウグスティヌスの愛の概念』(1929、 みすず書房 2002)、『全体主義の起原』1-3(1951、 みすず書房 1972、 1972、1974)、 『人間の条件』(1958、筑摩書房 1994)、『イェルサレムのアイヒマン』(1963、 みすず書房 1969)、『過去と未来の間』(1954、 1968、 みすず書房 1994)、『ラーエル・ファルンハーゲン』(1959、 みすず書房 1999)、『暴力について』(1963、 みすず書房 2000)、『アーレント政治思想集成』1・2 (1994、 みすず書房 2002)ほか。
Martin Heidegger(マルティン・ハイデガー)
1889年、ドイツのメスキルヒに生まれる。マールブルク大学助教授(1923-28)、フライブルク大学教授(1929-45)。1933年には同大学学長を務める。1945年、ナチス政権との関係のために教職活動を禁止され、51年復職と同時に退職。1976歿。著書『存在と時間』(1927、 ちくま学芸文庫 1994)、『カントと形而上学の問題』(1929、 理想社 1967)、『根拠の本質』(1929、 理想社 1939)、『ヘルダーリンの詩作の解明』(1937、 創文社 1997)、『「ヒューマニズム」について』(1949、 ちくま学芸文庫 1997)、『形而上学入門』(1953、 平凡社ライブラリー 1994)、『ニーチェ Ⅰ 美と永遠回帰』『ニーチェ Ⅱ ヨーロッパのニヒリズム』(1961、 平凡社ライブラリー 1997)、『ツォリコーン・ゼミナール』(ボス編 1987、 みすず書房 1991)ほか多数。 なお、「ハイデッガー選集」(理想社)と「ハイデッガー全集」(創文社)が刊行されている。
訳者:
大島かおり(おおしま・かおり)
1931年に生まれる。東京女子大学文学部卒業。訳書 アーレント『全体主義の起原』2・3(共訳)、スレーリ『肉のない日』、フィールド『天皇の逝く国で』、エティンガー『アーレントとハイデガー』、アーレント『ラーエル・ファルンハーゲン――ドイツ・ロマン派のあるユダヤ人女性の伝記』(いずれも、みすず書房)ほか。
木田 元(きだ・げん)
1928年に生まれる。東北大学文学部卒業。中央大学名誉教授。著書『現象学』『ハイデガー』『メルロ=ポンティの思想』『哲学と反哲学』『ハイデガーの思想』『ハイデガー「存在と時間」の構築』『偶然性と運命』(以上、岩波書店)、『哲学以外』(みすず書房)、『最終講義』(作品社)、『マッハとニーチェ』(新書館)、『闇屋になりそこねた哲学者』(晶文社)。訳書 フッサール『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』(共訳、中央公論社)、アドルノ『否定弁証法』(共訳、作品社)、ハイデガー『シェリング講義』(共訳、新書館)、メルロ=ポンティ『政治と弁証法』『眼と精神』(共訳、みすず書房)ほか。
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-アーレントの本-
『アーレント政治思想集成』全2巻
『アウグスティヌスの愛の概念』
『イェルサレムのアイヒマン』
『過去と未来の間』
『暴力について』
『全体主義の起原』全3巻
関連書:
矢野久美子 『ハンナ・アーレント、あるいは政治的思考の場所』
内容説明
女子学生と教授の「情熱的な恋」にはじまり、20世紀半ばの「暗い時代」の試練をこえて50年間、卓越したふたりの思想家が育んだ関係、深めた対話。その全貌がここにはじめて封印を解かれる。
目次
一九二五‐七五年の手紙とその他の文書(まなざし;再会;秋;エピローグ)
補遺(文書1から168までについての注記;遺稿からの補足的記録文書;編者のあとがき)
著者等紹介
アーレント,ハンナ[アーレント,ハンナ][Arendt,Hannah]
1906‐1975。ドイツのハノーファー近郊リンデンに生まれる。マールブルク大学でハイデガーとブルトマンに、ハイデルベルク大学でヤスパースに、フライブルク大学でフッサールに学ぶ。ナチス政権成立後(1933年)パリに亡命し、亡命ユダヤ人救援活動に従事。1941年、アメリカに亡命。バークレー、シカゴ、プリンストン、コロンビア各大学の客員教授を歴任、1967年、ニュー・スクール・フォア・ソーシャル・リサーチの哲学教授
ハイデガー,マルティン[ハイデガー,マルティン][Heidegger,Martin]
1889‐1976。ドイツのメスキルヒに生まれる。マールブルク大学助教授(1923‐28)、フライブルク大学教授(1929‐45)。1933年には同大学学長を務める。1945年、ナチス政権との関係のために教職活動を禁止され、51年復職と同時に退職
大島かおり[オオシマカオリ]
1931年に生まれる。東京女子大学文学部卒業
木田元[キダゲン]
1928年に生まれる。東北大学文学部卒業。中央大学名誉教授
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