内容説明
本書は、アラビア文化に世界文化史のなかの正当な位置を与えようとするものである。アヴィセンナ、アヴェロエス、ラーゼス等の中世アラビアの天才たちは、精力的にギリシア文化を翻訳し、それに注釈を施してヨーロッパに伝えた使者であるばかりではなく、独自の創造的精神に富んだ人々である。この書では、アラビアの衣裳をまとっていたがゆえに歴史から消えた彼らの数学・天文学・医学等の学問から、音楽・詩文の芸術、そして恋愛術にいたるまでのあらゆる達成に光があてられるであろう。そしてまた、この文化をヨーロッパに伝えた橋、シチリアとスペインの数世紀についても語られるであろう。これは、比類ない規模とドラマチックな筆致で、アラビア文化の黄金の日々を再現した書である。
目次
1 日常の薬味
2 世界の数字
3 精密な自然科学
4 医学と医薬
5 アラビア文化が咲き誇った理由
6 ヨーロッパへの橋、シチリア
7 ヨーロッパへの橋、スペイン
著者等紹介
フンケ,ジクリト[フンケ,ジクリト][Hunke,Sigrid]
1913‐1999。著名な書籍商の娘としてキールに生れる。宗教学、哲学、心理学、歴史学、ゲルマン学を学び、ベルリン大学において、民衆心理学、哲学、比較宗教学の分野において博士号を授与される
高尾利数[タカオトシカズ]
1930年山梨県に生れる。1959年東京神学大学大学院組織神学科修了。法政大学教授を経て、現在法政大学名誉教授
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感想・レビュー
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taming_sfc
2
ジクリト・フンケによる著作。全体を通してのフンケのメッセージは、西側世界がそのアラビア人・アラビア文化に対する歪曲したイメージを脱し、彼らのもたらしたもの、彼らが達成したものを、イスラームの正しい理解の観点から、正確に把握しようとするものである。ここにおいて、数学、自然科学、医学、建築、音楽、文学にいたるまで詳細なアラビア文化についての記述がなされる。西欧中心主義を排して、冷静にアラビア文化を評価しようとする筆者の姿勢は、今の時代こそ必要とされると思われる。イスラーム社会理解において必読書であろう。2011/02/26
Go Extreme
1
アラビア人貿易の勝利 コールテン織物産業の広がり アラビア文化と紋章導入 パピルス不足とヨーロッパの困難 アラビアの軍事技術とヨーロッパ伝播 ヨーロッパ人の入浴習慣の変化 東洋の豊かな芳香と製造工程 アラビア数字、ゼロの概念の受容 数学的思考の促進とローマ式計算 フィボナッチ『アバクスの書』 ゼロへのヨーロッパ人の困惑と抵抗 ゼロの形而上学的な思弁 ゼロを回避する試み 「発音されない無」ゼロの力 ムーカーの出自とシャキールへの疑念 ギリシア・バビロニア天文学の発展 アラビア人によるアルミラリ天球儀の改良2025/04/30