公衆の誕生、文学の出現―ルソー的経験と現代

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  • サイズ A5判/ページ数 268p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784622070344
  • NDC分類 950.2
  • Cコード C3090

出版社内容情報

絶対王制の確立はヨーロッパの知的風景に大きな変化をもたらした。ラテン語という共通言語の時代は黄昏を迎え、フランス語による書物の広範な普及を背景に、議論する「公衆」が登場し、力を持ち始めていた。本書はまず、デカルト、モンテーニュ、ヴォルテールらによる例をあげながら、名詞 public の意味が変容していくさまを精緻にあとづける。

『百科全書』の企ては啓蒙された読者=公衆の存在なしにはありえまい。文芸人は何よりも「会話の人」と定義された。ところが、この公論の時代のただなかに「人が集まるなかでどうしてすすんで話ができるのか、わたしには理解できない」と告白する人物がいた。彼は社交的世界での成功が手に入ろうとする瞬間、そこから逃走してしまう。ジャン=ジャック・ルソーという徹底的に異質な才能は、広がりゆく公衆の言語空間に何を見ていたのか。『告白』と『対話』のテクストを通じて、公共的世界からのルソーの意図的脱出の意味がここに明らかにされる。

われわれの生活を覆い尽くす広告的言説の洪水のなかで、現代人が取りうる戦略とは何か。ルソーの〈声〉はその可能性をどのように示してくれるだろうか。『幸福への意志』につづく刺激的な論考。


水林章(みずばやし・あきら)
1951年山形県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。パリ高等師範学校留学。パリ第七大学テクストと資料の科学科博士課程修了。現在 東京外国語大学教授。専攻は18世紀フランス文学。著書『幸福への意志』(みすず書房、1994)、『ドン・ジュアンの埋葬』(山川出版社、1996)。

内容説明

“公衆=至高の審判者”の創出されるそのとき、言説の谺としての公論に抗しつつ、おのれの声を救済するためひとり戦ったルソー。公共的世界と新たな言語の可能性との緊張を鮮やかに描き出す。

目次

1 公衆の誕生―「文芸の国家」から「公衆」へ(「文芸の国家」としてのピュブリック;原始的意味―国家としてのピュブリック;変容の徴候 ほか)
2 ある逃走の記録―『告白』における「公衆」の位相(カフェの作曲家―ミクロ・レクチュール;宮廷的世界のただなかで;サロン、文芸人、会話 ほか)
3 言語の専制の彼方へ―『対話』における公衆と公論(沈黙、そして闇;『対話』の言語、公衆・国民の刻印;「前掲書の後日談」 ほか)
エピローグ “文学”へのオマージュ

著者等紹介

水林章[ミズバヤシアキラ]
1951年山形県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。パリ高等師範学校留学。パリ第七大学テクストと資料の科学科博士課程修了。現在東京外国語大学教授。専攻は18世紀フランス文学
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感想・レビュー

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tatsuw0

1
文芸の国という、国家のメタファーとしてのpublicから、作家と読者たちの作るオルタナティブな力の共同体としての公衆へと意味が変化してゆく過程を跡付けてゆく前半と、公衆から逃走するルソーの特異な位置を描いてゆく後半、どちらもとても読み応えがあり、勉強になりました…2014/10/10

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