出版社内容情報
呪われた作家、ユートピア思想家、イエズス会の聖人は、同じエクリチュールをもつ、新しい言語世界の創造者である。バルトの理論的もくろみ。<初版1975年>
内容説明
呪われた作家サド、稀有のユートピア思想家フーリエ、イエズス会の聖人ロヨラ、背徳と幻視と霊性を象徴する、この三人の“近代人”の共有するものは何か。著者バルトは、言語学、記号学の方法によってのみならず、これに社会学、人類学、精神分析等の知見を加えて、彼らが、同じエクリチュール(書き方)をもつロゴテート(言語設立者)であることを明らかにする。ロゴテートとは、既存の言語体系に基礎をおきながら、これを超えた新しい言語宇宙の創設者をいう。この宇宙は、音声、記述言語によるだけでなく、さらに、行為としての言語(サド)、イメージとしての映像言語(ロヨラ)を含んでおり、ここにはバルトの現代的言語観が反映されている。本書の特色は、三人のもつ思想の内容にではなく、各人の表現形式に焦点をおき、分析を展開している点である。
目次
サド1
ロヨラ(エクリチュール;多様なテキスト ほか)
フーリエ(出発;快楽の計算 ほか)
サド2(「女」を隠すこと;食物 ほか)
生涯
著者等紹介
バルト,ロラン[バルト,ロラン][Barthes,Roland]
1915年フランスのシェルブールに生まれ、幼年時代をスペイン国境に近いバイヨンヌに過す。パリ大学で古代ギリシア文学を学び、学生の古代劇グループを組織、結核のため1941年から5年間、スイスで療養生活を送りつつ、初めて文芸批評を執筆する。戦後はブカレストとアレキサンドリアでフランス語の講師、その間に文学研究の方法としての言語学に着目、帰国後、国立科学研究センター研究員、1954年に最初の成果『零度のエクリチュール』(邦訳、みすず書房、1971)を発表。パリ大学傘下エコール・プラティック・デ・オート・ゼチュードのマス・コミュニケイション研究センター(略称セクマ)主任教授、コレージュ・ド・フランス教授となり、1980年死去
篠田浩一郎[シノダコウイチロウ]
1928年東京に生まれる。1954年東京大学文学部仏文科卒業。ロマン主義のなかから高踏派、写実派の“芸術のための芸術”の理論が発生する社会的背景を研究。同じ問題観から大学院で、ボードレールについて考察、「近代文学」、「新日本文学」等にエッセーを発表し始める。1957年以後東京外国語大学でフランス語、文学、社会思想を講じる。東京外国語大学名誉教授。その間フランス政府の招聘により1961年と1972年に留学
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