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出版社内容情報
私が物語るのは、私の運命ではなくて、ひとつの世代全体の運命である――人類への証言と遺産。
内容説明
ナチズムが席巻するヨーロッパを逃れて、アメリカ大陸に亡命したツヴァイクは、1940年ごろ、第二次世界大戦勃発を目にして、絶望的な思いで、本書を書き上げた。ウィーンの少年時代から書き起こされたこの自伝は、伝統の織り成すヨーロッパ文化の終焉を告げるものであり、著者が一体化した一つの時代の証言であり、遺書である。
目次
安定の世界
前世紀の学校
春の目覚め
生の万象
永遠の青春の都、パリ
自己への途上の廻り道
ヨーロッパを超えて
ヨーロッパの輝きと影
1914年、戦争の最初の頃
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
92
シュテファン・ツヴァイクは1881年、オーストリア・ハンガリー帝国にユダヤ系オーストリア人として生まれた。この回想録は二次大戦の最中、異郷の地で参考にすべき著書も手記も友人からの手紙もない状態で、ただ自分の記憶だけを頼りに書き上げられ遺稿となった。伝記作家として名高い彼自身の自叙伝ともいえる。第一巻は概ね一次大戦の頃まで。著者が物語るのは、本来、彼の運命ではなくて、一つの世代全体の運命だと言う。それは彼の愛するヨーロッパ文化の終焉を意味する。「昨日の世界」は、まず安定の時代であり、その終焉の時代であった。2022/02/11
syaori
70
ヒトラーに故国を追われた異郷のホテルの一室で作者は自身に命じる、「語れ、選べ、お前たち回想よ」。そうして語り始められるのは、二つの世界大戦を経験する前の、社会的・技術的に格段の進歩を見、人々が「最良の世界」に向け進んでいると信じていた時代。そこで一人の少年が見識と知識を広げコスモポリタンとして成長してゆく姿が描かれます。汎欧州的な理想と同時代の知識人たちに彩られたそれは、迫りつつある暗い時代の予感と相俟って何と胸に響くものであることか。ロマン・ロランとの出会い、第一次大戦勃発、期待と不安が交互して次巻へ。2022/09/13
やいっち
47
みんつぶで懐かしい本に再会。書庫にあるはず……。
飯田健雄
44
オーストラリア留学中の1980年代前半、メルボルンのモナッシュ大学の図書館から借りて読んだ。現在の朝鮮半島の危機で、戦争を期待する意見もあるが、ツバイクは、第一次大戦の勃発直後、こう言っている「戦争は3週間。出征すれば、息もつかぬうちにすぐ終わる。大した犠牲を出すこともない。私達は、こんな風に1914年の戦争を単純に思い描いていた。クリスマスまでには家に帰ってくる。新しい兵士たちは、笑いながら母親に叫んだ。クリスマスに、また!」そして、約4年続いた。歴史の教訓として、今も読む価値は十分にある。2017/05/04
松本直哉
40
一つの文明の滅亡を目の当たりにした作家の哀惜を込めた挽歌。美しい時代 Belle Époque と称された1914年以前のヨーロッパ文明の最後の輝きを、ホフマンスタール、リルケ、ロダン、ヴェルハーレン、ロマン=ロランらとの交遊を通して描く。伝記作家らしく一人ひとりの造形がくっきりと際立ち、世紀の変わり目前後のウィーンやパリの空気感が伝わる。書かれたのは第二次大戦中で、ユダヤ人の著者は愛してやまない欧州を追われ、追放の異郷でこの自伝を書いたあと自ら命を断つ。回顧的感傷にとどまらない貴重な時代の証言。2021/01/14
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