出版社内容情報
読書のエクリチュール、ブレヒト、バンヴェニスト等、言語圏の諸問題を扱った批評22篇を集成。
内容説明
本書は、言語圏の諸問題をあつかった批評的エッセー22篇を収めている。“読み”を“コード化”としてとらえる「読書のエクリチュール」をはじめ、意味の戦いをめぐる「修辞の分析」と「文体とそのイメージ」、さらに、文学テクスト(フローベールやミシュレ)における写実・描写に関する卓抜な論考「現実効果」など、バルトの多様な、しかし一貫したテクストを集成。また、ブレヒト、ヤーコブソン、バンヴェニスト、ジュネット、クリステヴァなどについて書かれた書評・オマージュは、バルトの、暖かな人間的共感に満ちている。
目次
第1部 科学から文学へ
第2部 作品からテクストへ
第3部 言語活動と文体
第4部 歴史から現実へ
第5部 記号の愛好家
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
14
バルトの態度を一言で表すなら「言語を通して世界を見る」ということになる。「人間は言語活動の構造を真に自然なものとして生きている」という断言のとおり、バルトは言語を人間活動の根本的条件として考えているのだ。故に、言葉が永続的な音楽としてなり続ける「言語のざわめき」を夢に見る。文学の基礎に言語学を持ち込み、書くことや読書の有り様を分析して、文学言語を複数の皮で成り立つ「たまねぎ」として捉え、歴史と言語の関係に批判的視線を投げる。言語を愛し、言語を細密に観察する科学者のいじらしさが、全面に出てていとおしい。2018/04/05
あなた
12
今までエクリチュールの概念が曖昧でよくわからなかったのだが本書でバルトはきわめて明確かつ戦略的に定義している。エクリチュールとは科学的言説と対置されるもので、それは支配的なコードを撹乱する「文章」のことだ。つまり、それはいままでの「文章=書かれたもの=書く行為(writing)」を転覆し新たな組成を試みる文章づくりのことである。講演口調なのでたいへんわかりやすいものとなっているがバルトの洒脱でしゃれっ気なスタイルはそのままなのでおすすめ2010/04/14
my_you
0
科学的言説のメタ言語性を批判しつつ、ではすべてがイデオロギー的な社会言語sociolectとして政治的分析の対象になるのかと言えば、そうではない。つねにユートピアを求める、言語のざわめきとはそういうものである。2015/04/11
STO
0
現実効果 ナラトロジーとの関連2024/07/16