内容説明
モンテーニュは、自分をはじめて見つめた人、人間が生きるための元気を鼓舞してくれる人である。「エッセイ」というジャンルの水源たる古典を、読みやすい新訳で。
目次
読者に
悲しみについて
われわれの幸福は、死後でなければ判断してはならない
一方の得が、他方の損になる
みずからの名声は人に分配しないこと
匂いについて
年齢について
さまざまの書物について
われわれはなにも純粋には味わわない
なにごとにも季節がある
後悔について
経験について
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
kana
36
一言でいうなら仏版徒然草。ギリシャ・ローマ時代の書籍を主に引用しつつ、心に浮かびゆくよしなしごとをそこはかとなく書き綴っています。このエセー抄の面白いところは道徳的なことを訴える年寄りの説教的な一節もありながら、「匂いについて」でひげについたキスの残り香をうっとりと綴ったり、結石の苦しみを切々と語ったり、快楽を追求して何が悪いと開き直ったりと極私的な意見も数多く書かれているその自由っぷりではないかと。大変読みやすい平易な文章は翻訳者によるところも大きいでしょう。徒然草も好きですが、本作品もなかなかよろし。2013/02/26
棕櫚木庵
23
1/6) 『エセー』から,序文と11編を収めるが,最終章の「3-13:経験について」がほぼ半分を占める.バランスを失しているようではあるが,この章が『エセー』全体の最終章であり,また,『エセー』を代表するにふさわしい章だからだろう.モンテーニュの,自然体で中庸を保とうとする姿勢と,『エセー』の談話風とでもいうべき語り口がよく分かったように思った.2022/01/31
吟遊
14
この前に保苅さんの講談社学術文庫『モンテーニュ』を読んだのだが、引用箇所がこちらの『エセー抄』とかなりかぶっていて面白い。響くところは、同じということか。宮下さん訳と保苅さん訳で読み比べた気分にもなれる。宮下さんは全訳もなさっているが、この抄訳はいいとこどりだな〜と思う。2018/05/29
Christena
12
「読者よ、これは誠実な書物なのだ。」という呼びかけから始まるこの本に、あっという間に夢中になった。『エセー』は退屈だというイメージがあり、興味はあるがなかなか手を出すことができなかったが、こちらのエセー抄はエセーの中から悲しみについて、書物について、経験についてなど11編を抜き出したもので、宮下志朗氏の訳も読みやすく、モンテーニュの人間としての魅力が溢れていた。次は全編を読んでみたい。2016/05/07
にたいも
10
宮下史朗さんの訳が分かりやすく、500年前の哲学者が今そこで話してくれているように思える。よく眠り、メロンと魚を好み、自分の記憶力を過信せず、病気(結石)とつき合う。庶民の家に里子に出されたことが、庶民のことを思いやる(知事である)ことにつながっていると自らをふり返っていることが興味深い。抄とはいえ、ボリュームはあるが、本物に触れてみたいと思ったときの一冊として適切だろう。2003年発行。2024/05/20