E.M.フォースターの姿勢

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  • サイズ B6判/ページ数 345,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622048114
  • NDC分類 930.28
  • Cコード C1098

出版社内容情報

「フォースターという作家には、何度読んでも、そのたびに前の読み方では肝心なところがわかっていなかった、もっとも本質的な部分が掴めていないといった思いをいだかされる経験をくりかえした……具体的な小さな事象についての解釈くらいなら、一応の納得はできる。だが、作品全体、あるいは彼の精神の世界全体となると靄につつまれたようで、どうもわかっていない気がする。多くの研究者たちはこの経験を<神秘的>の一語で片づけている感じだが、それでは説明にならない……。

ところが……(フォースターによる)『山猫』の短い書評を読んでいるうちに、<優雅な怠惰>といった言葉が、カヴァフィスの詩集の書評を読んでいたときに心にうかんだ<晴朗な精神>といった言葉とともに、フォースターの全体をつかむキーワードとしてふさわしいと思えてきたのだった。いわばこの<真の教養人>の呼吸の秘密がわかった気がしたのである」(著者あとがき)。

喜劇的精神とユーモアにみちた作家、また精神の「糊づけ」をきらう真の自由人。このとらえどころのない小説家=教養人の核心はどこにあるのか? 「岩」をはじめとする初期短編群から畢生の大作『インドへの道』へ、また女性に囲まれた生い立ちから同性愛やユニークな人生観まで、フォースターの人生と作品を詳細に探査・分析しつつ、その底に流れる根本的な<姿勢=核心>を明らかにする。半世紀にわたる精細な「読み」から生まれた、トリリングと並ぶ、第一級の作家論。

小野寺 健(おのでら・たけし)
1931年横浜に生まれる。1955年東京大学文学部英文科卒業、1957年同大学大学院修士課程修了。現在 日本大学教授、横浜市立大学名誉教授。英文学専攻。著書『イギリス的人生』(晶文社)、『英国文壇史』(研究社出版)、『英国的経験』(筑摩書房)、『心にのこる言葉 1-4』(河出書房新社)。訳書に、マーガレット・ドラブル『碾臼』(河出文庫)、ジョージ・オーウェル『オーウェル評論集』『パリ・ロンドン放浪記』『20世紀イギリス短篇選 上下』、パール・バック『大地 1-4』、『フォースター評論集』(以上岩波文庫)、カズオ・イシグロ『女たちの遠い夏』(早川文庫)、ウィリアム・ボイド『アイスクリーム戦争』(早稲田出版)、アニータ・ブルックナー『秋のホテル』『結婚式の写真』『英国の友人』『異国の秋』『嘘』『招く女たち』(以上晶文社)、『民主主義に万歳二唱』『アビンジャー・ハーヴェスト』『インドへの道』(以上みすず書房)などがある。

内容説明

初期短編「岩」から『インドへの道』へ、生い立ち・同性愛から「私の信条」まで。精神の“糊づけ”をきらった真の自由人の核心を明らかにする50年の読みの成果。

目次

喜劇的精神とユーモア
二つの家系
若いフォースターの教育
ケンブリッジ在学中の習作と初期の短編
『天使も踏むを恐れるところ』
『眺めのいい部屋』
『果てしなき旅』
『ハワーズ・エンド』
過渡期―『モリス』と同性愛
『インドへの道』
評論
『大公の物語その他の未完の作品』

著者等紹介

小野寺健[オノデラタケシ]
1931年横浜に生まれる。1955年東京大学文学部英文科卒業、1957年同大学大学院修士課程修了。現在日本大学教授、横浜市立大学名誉教授。英文学専攻
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