lettres
魔王〈上〉

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  • サイズ B6判/ページ数 238p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622048084
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

出版社内容情報

ドイツ軍の捕虜となり森と動物になじんだ彼にとって、ロミンテン禁猟区への移動は、さらなる導きとなった。プロイセンの森の奥深く、そこで見たのは帝国狩猟頭ヘルマン・ゲーリングの宮殿。鹿を狩り、ライオンと共に肉を食らうその姿に、人食い鬼たる自らの本質を感じつつ、さらなる太古の世界に向けてティフォージュは旅する……。ついに到達したカルテンボルン城は少年戦士を養成するナポラで、ナチズムの核心を体現する場所だった。

ソ連軍の猛攻に崩壊寸前のドイツ第三帝国、その中で死んでいく少年たち、ティフォージュはとうとうしるしの意味を知らされる。

☆ 20世紀の戦争を描く文学において『ブリキの太鼓』とならび不動の位置を占める幻想小説の傑作。
  全2巻(上下) 同時発売

☆ 映画『魔王』
  ジョン・マルコヴィッチ主演/フォルカー・シュレンドルフ監督
  音楽:マイケル・ナイマン/脚本:ジャン=クロード・カリエール

◇怖さが激しいほど面白いとさえ思ってしまう。-by「興味深い映画の原作本」(フィガロジャポン2002.8)

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Michel Tournier(ミシェル・トゥルニエ)
1924年パリに生まれる。ラジオ局、出版社に勤めたのち、『フライデーあるいは太平洋の冥界』(1967、邦訳1982、岩波書店)で作家となる。その後、本書をはじめとする作品を次々に発表し、現代フランスを代表する文学者でありつづけている。長編小説『メテオール(気象)』(1975、邦訳1991、国書刊行会)『オリエントの星の物語』(1980、邦訳1983、白水社)『黄金のしずく』(1985、邦訳1996、白水社)、中篇小説『聖女ジャンヌと悪魔ジル』(1983、邦訳1992、白水社)、短篇集『赤い小人』(1978、邦訳1979、早川書房)『愛を語る夜の宴』(1989、邦訳1992、福武書店)、知的自伝『聖霊の風』(1977、邦訳1986、国文社)、エッセー集『海辺のフィアンセたち』(1986,邦訳1998,紀伊国屋書店)ほか児童書も多い。

植田祐次(うえだ・ゆうじ)
1936年旧満州営口に生まれる。早稲田大学大学院博士課程中退。18世紀フランス文学専攻.青山学院大学文学部教授。著書『フランス文学史』(共著、白水社)『フランス文学にみる愛のかたち』(共著、白水社)『フランスことわざ歳時記』(共著、社会思想社)。訳書 レチフ『パリの夜』(岩波文庫)『南半球の発見』『アンドログラフ』(啓蒙のユートピア第3巻、監訳、法政大学出版局)『ポルノグラフ』(ユートピア旅行記叢書15、岩波書店)『サラ――最後の恋』(二見書房)サド『恋の罪』(岩波文庫)『ジュスティーヌまたは美徳の不幸』(岩波文庫)。編訳書 『フランス幻想民話集』(社会思想社)『フランス妖精民話集』(社会思想社)。

内容説明

「1938年1月3日。あんたは人食い鬼よ、ラシェルはときどきおれにこう言ったものだ。人食い鬼だと?つまり太古の闇から立ち現れる妖怪だと言うのか?なるほど、おれは自分の魔性を信じる。言ってみれば、深いところでおれの個人的運命を事物の流れにまき込み、そいつがおれの運命を自分の方向に傾斜させるのを可能にする、あのひそやかな黙約のようなものをおれは信じているのだ。」近視の大男、パリでガレージを営むアベル・ティフォージュは左手の=不吉な手記をこう始めた。子供たちの姿や声を収集する孤独なティフォージュは、ある日少女暴行の嫌疑をかけられ拘留される。彼が釈放されたのは、奇妙な戦争の開始のおかげであった。そして次々に符合する運命のしるしが主人公を思いもよらぬ世界に運んでいく…。

著者等紹介

トゥルニエ,ミシェル[トゥルニエ,ミシェル][Tournier,Michel]
1924年パリに生まれる。ラジオ局、出版社に勤めたのち、『フライデーあるいは太平洋の冥界』(1967、邦訳1982、岩波書店)で作家となる。現代フランスを代表する文学者でありつづける

植田祐次[ウエダユウジ]
1936年旧満州営口に生まれる。早稲田大学大学院博士課程中退。18世紀フランス文学専攻。青山学院大学文学部教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

harass

80
映画を公開時に見ていてピンとこなかった。この原作小説はスルーしていたが、千野帽子のレビューで興味をもち借りる。1938年パリの自動車修理工の主人公は、怪我をした右手の代わりに左手で手記を書き出す。彼の少年時代の回想を含めた彼の奇妙な人生と時代の徴(シーニュ)。何度も言及される価値転倒や敷き詰められた暗喩や隠喩。キリストを担いだとされる聖人クリストフォルスを自分になぞらえるのだが…… 主人公はドイツ軍の捕虜になり、東プロイセンに送られるが、ナチスはロシア侵攻を開始するところで上巻終了。海外現代小説の醍醐味!2017/10/07

HANA

48
『聖女ジャンヌと悪魔ジル』においては各登場人物の内面がほぼ描かれずに行動と台詞が全てを表していたのに対して、本作品では主人公の心理の告白が中心となって進行していく。本書の大部分を占める第一章はそれが特に顕著で、幼年期の思い出と象徴とフェティシズムが交互に立ち現れている。第一部の少年少女に対して二部の鳩、三部のヘラジカ等、何かの暗喩になってそうだが自分ではそこまではつかめなかった。そして聖クリストフォロス、少年と担ぎ等重要なテーマが既に底流として現れている。これが物語にどう絡んでくるか、下巻が楽しみである。2015/02/02

kasim

35
人の世界で生きるのに向いていないような主人公。閉塞感に満ちた寄宿学校も第二次大戦も、現実感のない朦朧とした悪夢のように見える。主人公は従軍しても戦争の行方や自身の生死にさえ関心はなさそうで、捕虜となって黙々とドイツ軍の命に従い働くばかり。だが、銀白の鳩や盲目のヘラジカとの交流ははっとするほど美しい。幼子キリストを運ぶ聖クリストフォルスの「担ぐ」=「仕える」「隷属させる」の神聖な両義性がどこへ向かうのか、まったく予想がつかない。淡々とした語りに「不吉な」緊張感が漲る。2022/05/06

syaori

22
最近作者が亡くなった(2016年1月18日没)ので、読もう読もうと思っていた本書を手に取りました。タイトルの「魔王」はシューベルトの歌曲を想定しているようです。まずアベル・ティフォージュが過去を語った手記が示されます。それから戦争が始まり、前線で伝書鳩の世話をしていた彼がドイツの捕虜になるまでが上巻で語られます。友人ネストールとの会話や死刑囚との生年月日や身長・体重の偶然の一致、聖クリストフォロス、伝書鳩、盲目の鹿などの様々な徴が彼の前に現われます。これらが彼をどこへ導くのか、下巻が楽しみです。2016/01/28

かんやん

18
大人のための神話的おとぎ話。パリでガレージを営む大男アベルは女に捨てられ、修理中に右手に傷を負い、左手の(不吉な)手記を書き始める。教会付属学校の寮生だった子ども時代の回想と思索。右と左、アダムとイブ、男と女、カインとアベル・・・。意味もなく、不条理な世界に投げ出されるのではなく、「いっさいは徴だ」。少年時代の出来事が寓意的に解釈され、次々と現在に重なりゆく。逮捕されても、戦争で捕虜になっても、そのこと自体に運命を見出し、ついにはゲルマン神話の森へと導かれてゆく。伝書鳩飼育のマニアックな描写が面白い。2017/10/08

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