出版社内容情報
スコットランド女王、仏王妃を経て、再び母国を親政、英国へ逃亡後処刑される。波乱に富む長篇。
内容説明
1542年、生後6日にしてスコットランド女王となったメリー・スチュアート。58年フランス皇太子と結婚、翌年フランス王妃となり、61年夫の早世により帰国。以後混乱を極めた政治情勢のなかで母国を親政する。新教支持から再婚を機に旧教徒へ、数年後には夫の暗殺者と結婚。反対勢力により監禁、脱獄してイングランドへ。エリザベス女王廃位の陰謀荷担の疑いで監禁、19年間幽閉後、女王暗殺事件陰謀者と内通していたとして処刑される。ヒトラー政権成立後、ロンドンに亡命中のツヴァイクが、たまたまメリー・スチュアートに関する歴史的記録を読んで興味をおぼえ、書きあげた作品である。
目次
ゆりかごのなかの女王
フランスにおける青春
女王、未亡人でありながらしかも女王
スコットランドへの帰国
石は転がりはじめる
大政略結婚市場
第二の結婚
ホリルードの運命の夜
裏切られた裏切り者たち
おそろしいわな〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
43
ライヴァルのエリザベス女王が姉の死によってやっと女王になれたのとは対照的に、メリー・スチュアートは生後6日でスコットランドの女王となる。ラッキー!と言いたいところだが生涯を俯瞰すると、まるでいいカードを最初に全部切ってしまったようなものだ。土台が盤石でなかった故にただひたすらにイングランド女王でありつづけようとするために、イングランドのために生きたエリザベス。ツヴァイクは、エリザベスのみをよき為政者とするのではなく、メリーにも美点があるとしながらも、そもそもの出発点の違いが二人の運命を分けたと断じている。2022/03/05
みつ
20
スコットランド女王にしてフランス王太子の妃についたメリー・スチュアート。その後王妃となるが王はまもなく死去。スコットランドでの暮らしが始まる。同時代人のイングランド女王エリザベス一世と対比するかのように歴史は進む。三度の結婚をしたメリーと生涯独身を貫いたエリザベス。ふたりが対峙する後半に対立は最高潮を迎える。「リアリストのエリザベスは歴史において勝ち、ロマンティイストのメリー・スチュアートは文学と伝説において勝つのである」(p122)。それでもメリーの子ジェームズは、スチュアート朝のイングランド王となる。2024/09/02
viola
7
一度挫折したツヴァイク。明日ドニゼッティのオペラ、マリア・スチュアルダを観に行くこともあり読了。しかしつまらん……。メアリ・スチュアートはめちゃくちゃ好きだし、伝記や歴史書は大好き。修論でも一部取り上げたくらいなので、この手のは読み慣れているのですが………なぜこんなドラマチックな人生をここまでつまらなく書けるんだ。読み物として面白くは決してないので、研究でどーーしても必要にならない限り読む必要はなさそう。エリザベス・バードのほうが面白い。2013/02/14
がんぞ
7
16世紀に宗教改革の余波でヨーロッパは激動し、辺境の島国・英国が世界の覇者へとのし上がっていった。「君主を斬刑」という前例のない犠牲メリー、勝者エリザベス。両者は君主が婚姻によって個人資産のように国土を継承していた時代から絶対君主が国家の利益を代表する国家概念大転換を代表する対照的な義姉妹だった。教養とは何かを私は考える。メリーの文才、度外れた行動力(ことに乗馬能力)は天才がフランス宮廷で育まれたもので、堅固なカトリック信仰は刃が打ちおろされるまで揺るがず、悲劇の女王と名を残すが、歴史上に評価されるのは?2012/09/30
ますん
4
食レポのホメ言葉として「意外とあっさりしている」とか「いくらでも食べられる」などという表現がよくあるけれど、それって本当にホメているのかと。要するに物足りないのではないかと。満足感が足りないだけなのではないかと。その点、ツヴァイクのこの伝記はコッテリしたおかず満載、ご飯大盛りおかわり自由、食後のデザートも盛りだくさんでドリンク飲み放題、サービス満点大満足の一品です。お試しあれ。2016/07/03