出版社内容情報
夫の暴虐に耐えたヘレンが掴む、新しい愛。末妹アンが自立する女性を描いた、本邦初訳の大作。
内容説明
夫の暴虐に耐えたヘレンが掴む、新しい愛。末妹アンが兄ブランウェルへの深い思いを込めて描いた、本邦初訳の大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゃれら
22
集英社文庫「ブロンテ姉妹」にアンの「アグネス・グレイ」が入っていて気に入ったので読みたいと思っていた一冊。6割くらいまで読んだところではあまりに宗教前提の議論が多くて退屈し後悔していたが、後半の展開はなかなか読ませるし、最後のシーンは読んでた甲斐のあるものだった。解説で語られるブランウェル・ブロンテの話は何とも悲しい。家庭の中に赤の他人(召使い)がいる環境は、今の僕たちからするとよく暮らしていけるものだと驚いてしまう。当時の「家政」は、家電がないから素人の手出しできるようなものじゃないんだろうなあ。2025/01/27
Mana
3
ブロンテ姉妹の末妹アンの本。昔ブロンテ姉妹についての本で「アンはとても良い子であんな本を書くようなイメージの女性ではありません」というシャーロットの発言(うろ覚え)を読んだけど、それがこの本だったのかな。嵐が丘とジェインエアは、あんなに幾つも文庫があるのにこれはこの全集しかないなんてもったいないと思う。嵐が丘とジェインエアは、なんとなく人間嫌いっぽい印象が似通ってる気がするけど、これは言われないと上記二作と姉妹の著書だとは思われないんじゃないかな。むしろ、田舎のコミュニティがオースティンに似てると思う2022/09/23
きりぱい
3
アン・ブロンテの描くヘレンは好きかもしれない(姉二人の作品に比べると)。しっかりした自己主張を持ち、特に、愛ってエゴだなあとつくづく思わせられる人物に対しての最後通告が痛快。裏切られても敬虔な精神を失わない強さにも好感。ワイルドフェル・ホールに住まう謎の導入部から、明かされる日記部分と、長かったからだけでなく、辛酸をなめた末に手に入れた幸せは、ヘレンだけでなくヘレンを待ち葛藤するギルバートの心情にも胸をつまらせるものがあって読み終えた満足感がある。2010/05/15
斉藤達也
1
ジェイン・オースティンを彷彿とさせる恋愛小説だ。しかし、ユーモアはあまり無く、一方、著者の正義感は何倍も強い。現代日本でいうところの「ちょい悪オヤジ」が完膚なきまでにこき下ろされているのを読んで、快哉を叫ぶ人もいれば顰蹙する人もいるだろうが、前者ならばこの長い小説を一度も退屈せずに読み切ることができるだろう。2017/12/10