出版社内容情報
百年前のパリを撮った写真家のあとを歩きつつ、自ら写真家としてアジェに重ねる画期的写真論。
内容説明
本書は、パリの路上で、そして東京で、足と目と頭をフルに動かして書き上げられた、斬新なアジェ論、写真論、都市論である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
まさむ♪ね
43
厚さ約6センチ、ページ数にして780にもなる写真集『ATGET PARIS』を小脇に抱えパリの街を歩く。それはアジェの撮った百年前のパリの街と今在るパリの街が交錯する時間の旅。百年という遠い隔たり、でも鳥のように自由な想像は時をもこえる。その写真家は霧のようにつかみどころなく謎めいているがゆえ、心の目は一層その被写体に吸い寄せられていく。アジェは何を思い何を考えその場所でシャッターを切ったのか。アジェの視線に自らの視線を重ね、アジェの写真と同じ画をファインダー越しに見たその瞬間、そこはアジェのパリになる。2016/11/03
おとん707
9
19世紀末から20世紀初頭にかけて大きな箱のようなカメラを担いでパリの街を隅々まで撮ったアジェ。パリの街を記録として撮り役所に納入した職業写真家。本人は自覚しなかったかもしれないがそれは芸術として認識された。これは600枚を超える画集「アジェのパリ」を持ってアジェの視線でパリを歩いた写真家大島洋の体験記だ。アジェの写真も参考に掲載されているがむしろ大島洋のパリとアジェへの愛情溢れる文に価値がある。パリの地図を逐次見ながら大島の足跡を追体験するような読書になったので随分時間がかかった。楽しい読書体験だった。2024/08/20
Koki Miyachi
8
旅廻りの劇団の売れない俳優として過ごし、後に画家を志したが挫折したウジェーヌ・アジェは40代になってから写真を撮り始める。その人生は謎が多く、それが魅力でもある。写真家でもある筆者はパリや東京の路上で、アジェの撮影ポイントに立ち、その写真に想いを馳せたエッセイ。それはそれでも構わないが、もちろんアジェ自身の想いではない。アジェをもっと知りたかった自分にとっては、正直残念であった。ただ、筆者が実際に足を運んで見ているので、アジェの写真が撮影された場所や現在の様子などを知りたい向きには最高の本かも知れない。2013/09/23




