内容説明
本書はインドネシアのバリ島に特有の社会制度〈ダディア〉に関する考察であり、これをバリ社会全体の解明のいとぐちにしようとするものである。本書では、〈ダディア〉が、バリの文化―宗教・政治・経済・芸術について論じ、分析する上で避けて通ることのできない、社会生活における重要な制度の一つであることを明らかにしている。
目次
第1章 文化、親族関係、そしてダディアの探求
第2章 私的領域における親族関係
第3章 公的領域における親族関係―平民のダディア
第4章 公的領域における親族関係―貴族のダディア
第5章 バリ人は親族全体系を持っているか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
著者はインドネシア全体の構造を王族階級(ヌガラ)と農耕共同体(デサ)の多様な動的関係に見た(『ヌガラ』1980)。本書で著者たちは、イスラム教のこの国でヒンドゥー教が残る地域バリでは、男系で内婚を好み共通の祖先を持つと信じるタディアという集団(カーストの中の小カースト)が制度化され、社会単位である村の構造自体を支えている点に着目する。その理由は、強固な絆を作るタディアが<偶発性>を排除せず成長衰退を繰り返す特徴があるからだ。本書は、地域に制約されつつ存続するこの集団の動的編成から、バリの特異な構造を描く。2024/04/15
huchang
2
原著に当たりたくなった表現が「寺院」。これバリ島の敷地内にある祠のような建造物を指すみたいなんだけど、私の感覚とは違うんよな。日本語の寺院は住職が本尊と檀家の墓をお祀りしているものじゃないのか。ここの「寺院」に相当するのは日本で言うと辻にあるお地蔵さんとかお稲荷さんとかで、あれは町内で管理するけど、あの家屋敷地内の「寺院」は親族で管理するし、規模としても管理の性格としても、そういうのは寺院とは言わんよなぁ…と思いながら、原著の寺院とは何ぞや。こういうとき、大学図書館めちゃ便利。たいがい原著もあったし。2023/02/26