戦争とプロパガンダ

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  • サイズ B6判/ページ数 121p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622036814
  • NDC分類 316.4
  • Cコード C1036

出版社内容情報

サイードの声に耳を傾けたい

〈9・11〉を全体の文脈のなかにどう位置づければよいか。ニューヨーカーとして、アラブとして、知識人として、事の真相に迫った、注目のメッセージ!

本書でサイードが「わたしたち」と言うとき、それは誰をさしているのか? 答えは、さほど単純ではない。少なくとも、9月11日の事件の後に合衆国のメディアを覆うようになった愛国ムードを煽るための「われわれ」とは対極にあるものである。ブッシュ政権のテロ撲滅戦争を批判し、爆撃されたアフガニスタンの民衆に同情を表明する識者の声は合衆国の中でも聞かれなかったわけではない。合衆国の戦争に便乗してパレスチナ人への迫害を一段と強化しているイスラエルを非難する声もあがっている。だが、テロ撲滅などという恣意的なスローガンのもとに大国の身勝手の犠牲にされているアラブやイスラーム世界の民衆を、「彼ら」として擁護するのではなく、「わたしたち」と呼びかけて励ますことのできるような欧米文化人がはたして何人いただろうか。そう呼びかけながら、同じ文章の中で、テロ事件による衝撃と悲しみをニューヨーク市民として分かち合うことのできるような人物が他にいただろうか。これほど見事に両方の側に立って分析し、発言することのできる人はまれであろう。逆にいえば、どちらの側からも距離を置いているということでもあり、それを可能にさせているのは、けっしてどこか一つのところに帰属することがない彼自身の在り方である。そして、ここに収めた一連の記事の中で一貫して強調されているのは、所与のものとされている「われわれ」と「彼ら」という区分のあやうさ、境界を設けることによって安堵を求めようとする衝動の愚かさと弱さである。(「訳者あとがき」より)


本書は、2001年9月はじめから12月下旬までに書かれたサイードの文章に、インタビューを付した8本から成っている。

[目 次]
プロパガンダと戦争
集団的熱狂
反発と是正
無知の衝突
ふるい起たせるヴィジョン
危険な無自覚
イスラエルの行きづまり
「9・11」をめぐって――インタビュー


書評など:
島森路子さん 毎日新聞 2002.4.28
中村輝子さん 京都新聞 2002.3.10
奈良新聞 2002.3.10
ほか

2月12日から連続4日にわたり、また第2弾で3月12日および13日に、朝日新聞紙上で、サイードと大江健三郎との往復書簡が掲載されました。そのなかで、大江健三郎さんは、「自分への疑いは持たぬ雄弁な若者に、メディアの宣伝の本だけでなく、サイードの本を読むよう…緊急かつ本質的な文章『戦争とプロパガンダ』、あわせて『文化と帝国主義』が読まれることを望みます」と語っています。




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Edward W. Said(エドワード・W・サイード)
1935年11月1日、イギリス委任統治下のエルサレムに生まれる。カイロのヴィクトリア・カレッジ等で教育を受けたあと合衆国に渡り、プリンストン大学、ハーヴァード大学で学位を取得。現在 コロンビア大学英文学・比較文化教授。邦訳されている著書に『オリエンタリズム』(平凡社、1986)、『イスラム報道』(みすず書房、1986)、『始まりの現象』(法政大学出版局、1992)、『知識人とは何か』(平凡社、1995)、『世界・テキスト・批評家』(法政大学出版局、1995)、『パレスチナとは何か』(岩波書店、1995)、『音楽のエラボレーション』(みすず書房、1995)、『文化と帝国主義』(全2巻、みすず書房、1998、2001)『遠い場所の記憶 自伝』(みすず書房、2001)などがある。


訳者:
中野真紀子(なかの・まきこ)
翻訳家。訳書にサイード『ペンと剣』(クレイン、1998)、『遠い場所の記憶 自伝』(みすず書房、2001)エリオット・レイトン『大量殺人者の誕生』(人文書院、1995)など。

早尾貴紀(はやお・たかのり)
1973年生まれ。東北大学文学部卒。現在 東北大学経済学研究科博士課程在籍。社会思想史専攻。論文「「従軍慰安婦」問題における暴力のエコノミー」(『現代思想』1999年6月号)「パレスチナ・イスラエルにおける記憶の抗争 ──サボテンの記憶」(岩崎稔(編)『集合的記憶とは何か』、人文書院、近刊)。

内容説明

“9・11”を全体の文脈のなかにどう位置づければよいか。ニューヨーカーとして、アラブとして、知識人として、事の真相に迫った、大注目のメッセージ集。

目次

プロパガンダと戦争
集団的熱狂
反発と是正
無知の衝突
ふるい起たせるヴィジョン
危険な無自覚
イスラエルの行きづまり
「9・11」をめぐって―インタビュー

著者等紹介

サイード,エドワード・W.[サイード,エドワードW.][Said,Edward W.]
1935年11月1日、イギリス委任統治下のエルサレムに生まれる。カイロのヴィクトリア・カレッジ等で教育を受けたあと合衆国に渡り、プリンストン大学、ハーヴァード大学で学位を取得。現在コロンビア大学英文学・比較文化教授

中野真紀子[ナカノマキコ]
翻訳家

早尾貴紀[ハヤオタカノリ]
1973年生まれ。東北大学文学部卒。現在東北大学経済学研究科博士課程在籍。社会思想史専攻
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

夜間飛行

67
米政府とメディアが一体化して「我々につくかテロリストにつくか」と二者択一を迫る…その怖さを9.11直後に指摘した人がいると知り、ほっとした。もちろんテロ自体は言葉に尽くせないほど酷い事であり、悲しい事である。が、その恐怖や怒りにつけ込んで煽動するようなプロパガンダを行い、ビンラディン一味以外にもアラブには沢山の敵がいると人々に信じ込ませた行為もまた許せるものではない。その為に無実のアラブ人が苦しみ、悲劇の上に悲劇を重ねたのだ。単純な正義のプロパガンダに巻き込まれるのがいかに恐ろしい事か、肝に銘じておこう。2015/06/07

蘭奢待

58
ここのところ現実逃避から虚構に逃げていたが、久々の重いテーマ。サイードはパレスティナ生まれの米国人。この本は2001年9月の同時テロ事件直後に発表されたエッセイである。宗教、国、人種など様々な要素があるにもかかわらず、アラブか、ムスリムかでタギングし、単純に二項対立させ敵が味方か、こちらかあちらか、普通か異端かを判断することを煽る政治とメディアの危険性を糾弾する。アラファトの失政、アメリカに擦り寄るアラブ諸国、単純バカなアメリカを嘆く。サイード存命なら現代のアメリカと世界をどう見るか。

nobi

51
『音楽と社会』では見解が抽象的という印象あったが、本書(9.11前後の投稿)ではクールな分析からサイードの熱い想いが切々と伝わってくる。“パレスチナ人が味わっている打ちのめされるような苦痛や屈辱”とそのことが世界から理解されないという状況を打破したいという想い。イスラエルのプロパガンダ、米国のイスラエル支援、メディアの偏向報道、パレスチナの政治や教育のひどさ等。それは20年後の今も続いている。一方で目に見えにくい“相互の交流や異種交配や共有の歴史”がハンチントン「文明の衝突」では切り捨てられていると論駁。2024/09/28

さえきかずひこ

14
9.11直後から2002年1月にかけて主にエジプトの英字新聞、アル・アフラーム・ウィークリーに掲載された、著者による理知的な論考を選び、巻末にインタビューを付したもの。9.11を契機にイスラエルのパレスチナに対する容赦ない攻撃が開始されたことを知れてためになった。彼はイスラエルだけでなく、イスラエルの蛮行を黙認する米政府と右派的なジャーナリスト、民衆抑圧的な中東各国の支配者、ビンラディン、そしてアラファトの全てを批判し、アラブの政教分離主義者のグループに希望を託している(P.83-85)。続きも読みます。2020/02/13

oz

8
初読。ポスト・コロニアリズム論者サイードが9・11以降ネットで断続的に発表した論文の邦訳とインタビューという構成。事件以後のアメリカの論調はイスラエルの不法占領によって苦しむパレスチナという構図が抜け落ちたオリエンタリズムのドクサに満ちていると警告し、黙示録的な単語を多用して戦争へと邁進するアメリカにイスラーム原理主義と同様の臭気を感じ取る。当時の情勢変化に論も対応しているため当時の空気が伝わってくる。英語が解せてこの論文をリアルタイムで読めたら、違った態度でイラク戦争を目撃出来たかもしれない。2009/12/04

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