ディナモ・フットボール―国家権力とロシア・東欧のサッカー

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  • サイズ B6判/ページ数 267,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622033899
  • NDC分類 783.47
  • Cコード C0075

出版社内容情報

サッカーの歴史を振り返ると、旧ソヴィエト圏、東欧、旧東ドイツには、頭に「ディナモ」とつく名門クラブ・チームが存在する。これはいったい何を意味するのか? 著者が取材を進める中で明らかになったことは、それらのクラブには、内務省・秘密警察が大きく関わっていたという事実である。対戦国に勝つための水面下の工作(国威の発揚)もあれば、選手に諜報機関員やその使命を帯びた者を配し、海外試合を利用するということもあったようだ。

「ディナモ」(DYNAMO)は「ダイナモ」に通じることから、これまで「電気技師組合のクラブ」というのが定説だったが、実際は、警察、秘密警察、内務省のクラブであった。東欧諸国に数ある「デイナモ・~」のルーツは旧東側陣営の総本山モスクワである。ディナモ・モスクワこそが元祖ディナモであり、ロシアにおけるクラブのルーツでもある。そういった事情のため「ディナモ」という名称は社会主義の時代を生きた人々にとって「憎悪」と「憧憬」という引き裂かれた感情の象徴となっている。

スポーツが政治と関わることは多く、昨今そのテーマでの質の高い出版物が現われるようになってきた。本書はそういったなかで、まさに今まで語られていない切り口で、サッカーと政治・社会の相克を描き出す優れたドキュメンタリー作品となっている。冷戦の時代が終わり、東西対立は過去のものとなった。政治社会情勢が変わり、スポーツは新たな社会構造・経済構造との関わりの中で変貌を余儀なくされている。文化としてのサッカーは、そして、かつての名門クラブはどこへ向かうのであろうか。

書評情報:
信濃毎日新聞 2002.4.26
朝日新聞 2002.5.7 佐山一郎さんが書評
京都新聞 2002.5.19
北海道新聞 2002.5.26 大崎善生山河書評
ほか

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宇都宮徹壱(うつのみや・てついち)
写真家・ノンフィクション作家。1966年福岡県生まれ。1992年東京芸術大学大学院美術研究科修了。TV制作会社勤務を経て、1997年よりジャーナリストとしての活動を始める。サッカーを単なるスポーツとしてではなく「文化」としてとらえ、世界の民族問題、宗教問題、社会問題とのからみでドキュメンタリーとしてまとめていく仕事を展開している。著書として、『幻のサッカー王国――スタジアムから見た解体国家ユーゴスラヴィア』(勁草書房、1998年)、『サポーター新世紀――ナショナリズムと帰属意識』(勁草書房、1999年)がある。

内容説明

憎悪、そして憧憬―自由が抑圧された社会主義の時代を生きた人々にとって、“ДИНАМО”は二律背反の感情を抱かせる「栄えある称号」であった。ポスト冷戦時代を生きる、かつての名門クラブの物語。

目次

プロローグ 東方から飛来した謎のチーム―ロンドン1945
第1話 「いかさまマイスター」始末記―ベルリン2000
第2話 「オスト・ベルリン」の心意気―ベルリン~ブラウンシュヴァイク2000
第3話 史上最強のディナモ―キエフ2000
第4話 オー・スポルト・ティ・ミール―モスクワ2000
第5話 スパルタク・モスクワとレーニン像―モスクワ2000
第6話 哀しきカフカスのディナモ―トビリシ2000
第7話 「ディナモ」の源流を求めて―モスクワ2001
第8話 スタジアムのなかの革命劇―ブカレスト2001
第9話 消えたバッド・ブルー・ボーイズ―ザグレブ2001
エピローグ 「おろしやの幻影」を追いかけて―ダブリン2002

著者等紹介

宇都宮徹壱[ウツノミヤテツイチ]
1966年福岡県生まれ。1992年東京芸術大学大学院美術研究科修了。TV制作会社勤務を経て、1997年より写真家としての活動を開始
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ベイス

75
ディナモ○○、というチームはwikiによると現在ロシアと東欧・ドイツに19もある。その多くがかつて旧ソ連の秘密警察などの国家機関に紐付いており、大衆にとっては熱狂と反抗、二律背反な存在であり続けている。今日の情勢で言えばやはり気になるのはウクライナのディナモ・キエフ。かつてソ連代表がW杯メキシコ大会でグルーブリーグを突破したとき、主力のほとんどはこのチームの所属だったという。最近ではCLで上位に顔を覗かせることもあるがその起源を考えると複雑だ。著者の視点は秀逸で古びていないが、筆致がやや作為的なのが残念。2023/05/30

Hiroki Nishizumi

2
サブタイトルが国家権力とロシア・東欧サッカーだったが、ちょっと勘違いした。内容はロシア・東欧の蹴球小史。権力との関わりあいにはあまりページは割かれていない。2017/01/17

BATTARIA

1
モスクワ、キエフ、トビリシ、バトゥーミ、ザグレブ、ベルリン、ドレスデン、ブカレストなど等、旧ソ連や東欧諸国のスポーツクラブで、判で押したように使われているディナモという名は、人民を監視し弾圧した秘密警察によって作られたクラブであるということを、ソ連崩壊から20年以上経った今では、知る人も少ないんだろうな。歴史背景とかはきちんと押さえられているし、韓日W杯でのロシア代表の化けの皮を剥いだという意味でも評価できるけど、人名のカナ表記の間違いはお粗末すぎ。ディナモ・ベルリンのオーナーがミーケレなんてありえない。2013/10/04

ハローCZO

1
東欧諸国で名を馳せている「ディナモ」を追った一冊。所謂「サッカー本」であるが、一方で「旅本」とも感じられる程に各国の風景が垣間見られ非常に読み応えのある本だった。なんと言うか、サッカーの世界の奥深さみたいなものを感じられますね。日韓W杯前に出された本なので現代との違いが気になるところではあるけど、非常に考えさせられるオススメの一冊です。2014/02/19

干しえび1号

1
旧ソ連などの東側諸国のサッカーの歴史と現在を知る事が出来る紀行文。本田圭佑がロシアでプレーしてるの見てると目に入るディナモ・モスクワというチーム名は一体何なんだ?と興味持ったり、サッカー史を知りたいと思ったガチのサッカー好きが読むべき1冊。共産主義がどのように東側でのサッカーに影響をもたらしたかも少し触れられているので、いわゆる「共産趣味」を持ってる人が読んでもいいかもしれない2012/12/11

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