出版社内容情報
「高度成長反対」から「丸山眞男追悼」まで、膨張と崩壊の時代を証言する批判的精神の記念碑。
内容説明
本書は、著者がしばらく日本を離れ、イギリスから帰国しての第一声、1969年5月の「高度成長反対」から始まる。その翌月からは、「根拠律」「文明論之概略」といった表題で雑誌『みすず』の「巻頭言」が執筆される。その頃は、著者にとっても一つのターニング・ポイントの時期であった。73年の「雄弁と勘定」は、著者の天皇制批判と人民主権論のセットの転調過程をよく示している。「高度成長」の下で新重商主義というのが急速に支配的になっていって、「勘定」的合理性が肥大化していくことによって、人民主権を支えていくような対立を通じての対話とか議論が社会的に消滅していく。したがってそういうものを支えていく文明史的条件の問い直しの必要が言われるようになる。かくして70年代後半から著者は、人間と社会と文化の「原初的条件」を明らかにすることが同時にアクチュアリティーを意味するような20世紀的な学問に学びつつ、やがて『精神史的考察』『全体主義の時代経験』に結晶する前人未踏の領域に歩み入った。この著者にとっての最終ステージにあって、時代の証言として書かれた単行本未収録の作品のほぼ全てを収録する。
目次
「高度成長」反対
根拠律
文明論之概略
小説 和名抄
近時政論考
アレオパジティカ
或る生の姿、或は範疇の混同―アイン・レーベンスビルト
人権宣言
自由考(効果の相殺)―または日本資本主義分析
情熱的懐疑家〔ほか〕