出版社内容情報
非平衡熱力学の開拓者が可逆的な力学的世界観から不可逆的熱力学的世界観への転換の意義を明示。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
5
量子力学での系のエネルギー(ハミルトニアン)と共役性をもつ演算子で時間発展を記述すると、相対性理論の共変性の確保がうまくいかないという批判もあるが、本書はリウビル方程式の時間演算子を使い、相空間内での確率分布の変化による「内的時間」を物理世界に導入する。この世界は軌道のような線形ではなく、滑らかな相空間(phase space)で記述される。こうして時間の流れを否定する議論の多い従来の物理学に、不可逆性、非線形性、ゆらぎを導入する著者の理論的努力は、複雑系という中間的な物理世界を記述する科学を可能にする。2017/10/06
Nachtwachen
2
ミクロな時間を演算子で表現すると非可逆的な時間が出来上がりますという主旨。熱力学推しをさらに進めて統計力学の考え方を根本に据える。すごいと思うがすごく怪しいとも思う。何気に古い本なのでこの理論が最近どうなっているのか気になった。数式の導出過程など書かれておらず、結果だけ並べていくので「は~そうなのかー」と知ったかぶりして読み進めるしかなかった。物理学をよく知っている人なら正しく批判的な読み方が出来るはずだ。考え自体が刺激的なのは確か。文字通り熱が入ったプリゴジンの自慢げな調子は何となく、それだけで面白い。2013/04/10