内容説明
数限りない戦争を経験してきた人類は、逆説的には、教訓を引き出すべき貴重な過去をもっているとも言える。核戦争の脅威を前にして、私たちは歴史から何が学べるか、何を学ぶべきか。アメリカの創造的な理論物理学者ダイソンは、人類の歴史の中からさまざまな寓話を拾い、その教訓に照らしつつ、核兵器に対する人類の対応を探る。SDI論議を一つの焦点として核兵器問題への関心が高まる中で、政治的に二分された議論をかみ合わせ、論争を実りあるものにするための示唆的な問題提起である。
目次
第1部 設問(違った考えが出会うための準備;生存の可能性の問題)
第2部 道具(軍備競争の矛盾;ダビデと巨人ゴリアテ;スター・ウォーズ)
第3部 人々(科学者と詩人;学者軍人;将軍たち;外交家;平和主義者)
第4部 考え(行き詰まることの重要性;考えを探る;確証破壊;核戦争を戦う;一方的軍縮)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
6
祖国英国で数学者として作戦行動の数理モデルから実戦での飛行機、銃器、兵士の効率的な実行を計策していた著者は、戦後米国に渡って科学者のエリート組織JASONに入り、冷戦時の核軍縮に携わる。軍拡の矛盾を指摘する本書は、地球上での分断や争いのための核使用ではなく、広大な宇宙へと進出し、人類が争いなく棲み分けするための基礎技術として核の開発を行うように提案する。著者はこのビジョンを軸に、今まで経験したことのない核戦争に直面した現代社会に、歴史から学ぶ態度を示しながら(ダビデとゴリアテ等)、問題の方向転換を試みる。2022/03/02
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- 和書
- 翼よ、北に