出版社内容情報
15歳でアウシュヴィッツの地獄をくぐったノーベル平和賞作家の自伝的小説。悪と悲惨と崇高と。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
蘭奢待
42
ユダヤ人の少年が主人公。何をされてもめげず、敬虔なユダヤ教信者だったが、強制収容所での体験で信仰心を失う。ばかりか、最愛の家族も次々に殺され、衰弱死してゆく。人間の基本的な部分についてとても深く考えさせられる。 とても重い内容ながら、物語りの形式をとっているため大変読み易い。2019/03/01
ねこまんま
31
「アンネの日記」を読んで分かったような気になっていて、いや、それ以上のことは知りたくなかったのかもしれない。これは凄まじい。生還した人は思いだしたくもないだろうに、こうして書物に残してくれたことに感謝します。なんとか逃れる術はなかったんか?と思う箇所もあったけれど、それこそ今だから思うことであって、当事者にとっては考える間もない出来事だったんだろう。2017/04/15
James Hayashi
29
1986年ノーベル平和賞受賞の著者。15歳でハンガリーの片田舎からアウシュビッツへ連れ去られ、毎日恐怖と不安にかられる人々。人としての扱いを受けず、家畜以下の肉体となる。金目の物や靴、金歯まで抜かれ持ち去られたという。家族との別離。見るに耐えない衰弱していく父。絶望。神はなぜ手を差し伸べないのか?著者は父を失い自由を感じるが葛藤も感じる。なんとも不自然な生存。これ程の悪事は今後決して起こしてはならない。悪魔以外の何者でもない。2017/02/14
ちえ
25
エリエゼル(神は助けである)という名の少年はトランシルヴァニアの小都市から強制収容所へ移送され解放された時、彼の魂の中で神は死んでいた。何度もの選別を逃れ絶望の中で支えあってきた父、別れ。絶対的な悪。その中で奏でられる別れのバイオリン・・・広島の原爆を書いた『八月の光』の後書きの引用で知ったエリ・ヴィーゼル。【モーツアルトはお断り』がリクエストで届いた日の図書館古本市で図書館の除籍本で手にした。読むように導かれたと思う。作者が前書きを書いている新版の『夜』もあるという、是非読みたい。2018/10/04
きっち
10
ホロコースト文学の傑作。少年の頃に強制収容所に放り込まれた著者の自伝小説である。最初に読んだのが二十歳のときで、それから5年にいちどの割で読み返している。初めて読んだときは、あまりのショックで3か月ほど他の本が読めなかった。強制収容所で日々繰り広げられる地獄絵図。ひとりの無垢な少年が、身も心もぼろぼろになり、ついには生きながら屍体と化すまでが淡々と描かれている。わたしはこれまで、これほど心を揺さぶられる本に出会ったことがない。読むにはそれなりの覚悟がいるが、読むべき本だと思う。2019/04/08