感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
61
『夜明け』と『昼』を読むために。どちらも戦後が舞台で、強制収容所から「帰って来た者の悲劇的な在り方」が、苦悩が描かれます。とても辛かったのが、「生きている死者」となっている主人公に「喜びを与えたい」と思う人々の愛が彼のアウシュヴィッツに呑み込まれてしまうこと。最後、彼は彼を愛する者を「しあわせにしてやろう」と思い、それが彼を現世に繋ぐ絆となることが示唆されますが、それでも凄絶な体験の聖別にも似た傷痕は癒えることはないのだとまざまざと示されたようで、寄添うこともできない事実を前に暗澹たる思いに包まれました。2020/12/25
ころりんぱ
33
15才でアウシュビッツに収容された作者の体験が元に書かれた小説。父親と共に選別を逃れるため、飢餓と虐待に耐える姿とその心理は過酷の一言。翌年解放されたものの、戦争前と後では彼のすべてが変わってしまう。生き残ったのに、死者と共にいる主人公。「夜明け」「昼」とも、強制収容所の過去を持つ主人公が、死を内に抱えながら、「生きる」ことに苦悩している状況を描く。死者のために幸せを拒む?生きながら心が死んでしまった人の心理に、胸を締め付けられた。戦争が終わって助かって万歳って風にはならない事が改めてよくわかった。2013/09/10
kasim
12
息をつめて一語一語辿るしかない、強制収容所の記憶、『夜』。『夜明け』は被害者が加害者に入れ替わるパレスティナの残忍な皮肉。『昼』では生き残った者の空虚さが戦後周囲の人々をも蝕んでいく。「アウシュヴィッツ以降、詩を書くことは野蛮」という言葉があるが、ヴィーゼルの文は不思議なほど澄んだ深淵のように美しい。この作品を消費し鑑賞して、間接的に体験した気になっている自分が傲慢でないかという居心地の悪さも拭えない。『夜』のみ再読。2017/02/24
Rie
7
「夜」は強制収容所を体験した著者の自伝的小説。「夜明け」「昼」は強制収容所を生き延びた過去を持つ主人公がそれぞれの人生を苦悩の中、生き直す物語。特に「夜」の強制収容所体験は凄まじい。人は自分の心の持ちようで幸福にも不幸にもなれると信じている。しかしそれが困難な程、過酷な現実もあるのだと思うと悲しく恐ろしい。一夜にして根こそぎ信仰も希望も奪い取ってしまった現実は他2編においても、心の内から去ってはいない。読んでいて辛くなるが、自らの光を問い直したい作品。2014/06/15
twinsun
3
たった二行か三行かの事実を記すことで人を絶望の淵にたたき落とし人が死後を生きる無残を突きつけてくる。2021/06/04
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- 和書
- 電力回生とエネルギー貯蔵