内容説明
偉大な作家の、偉大な作品には、何が書かれているのか?この大いなる謎にウオルィンスキイは挑戦する。20世紀初頭のロシア・ルネサンスの人であった彼は、ドストエフスキイの作品のなかに、神を求める強い一本の線を引きながらも、闇の王国での悪魔の挑梁に陶酔しつつ、作家の精神的宇宙と人間存在の深部へ迫ろうとする。そして精緻をきわめた燃えるような記述で、文学における〈情熱の原点〉へと読者を引き房す。それは、分析的な批評形式では到達しえない領域にある。《悪霊》について書かれた〈偉大なる憤怒の書〉、《白痴》についての〈美の悲劇〉、そして〈カラマーゾフの王国〉のドストエフスキイ論3部作、一巻に収録する。
目次
1 偉大なる憤怒の書―『悪霊』研究(ヨナ(序詞)
仮面
情熱と色慾
灰色の墓
ロシヤの《馬橇(キビツカ)》
正しき羔羊
虚無主義
シクスチンの聖母
《偉大なる憤怒の書》)
2 美の悲劇―『白痴』研究(罪と罰―車室にて・ラスコーリニコフ;美しきもの―『白痴』の分析への序(ある老いた心酔者の日記より)
美の悲劇―ドストエフスキイの小説『白痴』について
新しい波)
3 カラマーゾフの王国―『カラマーゾフの兄弟』研究(極道女(じごく)
「大いなる憤怒」の女
父親・カラマーゾフ
ドミートリイ・カラマーゾフ
「母なるラッセーユシカ」
ヴォロキータ
悪魔に憑かれた哲学者
大審問官
人神と神人
アリョーシャ
少年たち
神愛(ボゴフイーリ)者たち
聖人群像図
ゾシマの法悦)