感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
全滅しました
2
表意ベースで音の研究を行うために導入された『音素』についての簡潔なまとめ+ソシュール批判からなる講義録。「(他の音素との弁別作用をもつという意味では)有意的でありながら(直接的にシニフィエを表すわけではない=音韻なので)同時にあらゆる表意的な作用を欠く」という音素の定義は明快。昔読んだときは半分ぐらい意味が不明だったのだが(特に事例として用いられがちなスラブ語の知識がゼロだったこともあり)、今回はだいぶ分かった(というか、すごく明快な内容で驚いた)。2013/10/08
Ilya
1
音素という言語において多面的な意味できわめて独特なこの概念を、それ自体でなく他の音素との関係性の中に定義するという本講義は、ソシュール学説を克服した先の現代音韻論の礎である。線的でない弁別特性を音素に認めることでその基底にある無機質な対立と表意作用の差異の対応から能記としての音を検討する本書の取り組みは、レヴィ・ストロースが近親相姦禁止の概念におけるバラエティの解釈をこの議論に見出したと序で記述しているように、言語活動を越えた科学諸分野にインスピレーションを与える論理展開であることがうかがえる。2020/09/20