内容説明
明治いらい日本の法制度は、西欧をモデルに形式的に整備された。しかし「法」が、一般に人びとの判断や行動を方向づけ、コントロールする一方、また手引にもなるものとすれば、その社会・その国のなかで現に生活している人びとの要求や現実を離れてはありえない。著者はより根元的な日常世界からエネルギーを汲みとり、それの「法」の世界へのフィードバックの実態を、最近の裁判の事例―「プライバシー」「猥せつ」「隣人訴訟」等の裁判、「輸血拒否」事件―に即して具体的に説いている。広く世界を視座におき、歴史の変遷をふまえ、生きている習俗・情緒をもつ日常世界と法構造とが、どのような形で結びつくかを説く。尖鋭な法哲学者による新鮮な現代へのアプローチ。
目次
1 モティフ
2 法と人間
3 社会的仕組における法制度と法思考
4 法があるということと法意識
5 日常性への法的思索と反省―法文化と法哲学