出版社内容情報
計算機の飛躍的な進歩と普及により、量子化学計算はいまや有機化学研究において欠かせないツールとなりつつある。しかしその一方で、「理論が難しそう」「何から始めればよいかわからない」と感じ、導入に踏み出せない実験化学者も少なくない。量子化学計算の詳細を完全に理解することは容易ではないが、その基本的な考え方を抑えることで、実務的な利用は十分可能となる。
本書は、分子モデリングソフトウェア「Spartan」を用いた実践的な演習を通して、分子モデリングやDFT計算の基本的な考え方と活用法を学べる入門書である。分子構造の可視化から構造最適化、分子軌道の解析、NMR化学シフトの予測、さらには構造解析に至るまでを、実験化学者の視点から丁寧に解説する。
数式や理論の厳密な理解を目指すのではなく、得られた計算結果をどのように解釈し、実験結果と結び付けて研究に活かすか――その実践的な視点に重点を置いている点が本書の大きな特徴である。
これから計算化学を学び始める学生・大学院生はもちろん、研究に計算手法を取り入れたい実験系研究者にとっても、有用な指針となる一冊。
【目次】
はじめに
第1章 まずは体験してみよう
第2章 分子モデリングに用いるコンピュータについて
2.1 計算機=コンピュータとは
2.1.1 コンピュータの種類
2.1.2 オペレーティングシステム・アプリケーションソフトウェア
2.1.3 コンピュータの性能の指標
2.1.4 ハードディスク・SSD
2.1.5 現在のPCは驚くべき計算速度
2.2 分子モデリングソフトウェアの紹介
2.2.1 Gaussian
2.2.2 TURBOMOLE
2.2.3 Firefly(旧称:PC GAMESS)
2.2.4 HyperChem
2.2.5 Chem3D
2.2.6 Spartan
2.3 分子モデリングを正しく活用するために
第3章 分子モデリングにおけるいくつかの考え方
3.1 分子力学法
3.2 量子力学手法
3.2.1 半経験的分子軌道法
3.2.2 Hartree-Fock法
3.2.3 結合クラスター法
3.3 基底関数
3.4 電子密度汎関数理論
3.4.1 汎関数の種類
3.5 DFT計算条件の表記方法
3.6 AIを活用した分子モデリング
第4章 分子モデリングの概要
4.1 エネルギー計算
4.2 構造最適化
4.3 配座解析
4.4 膨大な配座を解析する工夫
4.4.1 モンテカルロ法
4.4.2 スパース法
4.5 配座の絞り込み
4.6 配座エネルギーとBoltzmann分布の関係
第5章 NMR化学シフト計算
5.1 化学シフト計算の精度
5.2 Spartanにおける化学シフト計算手法
5.3 Gaussianソフトウェアを使用して化学シフトを計算する
5.4 計算で得たNMR化学シフトの解析
5.4.1 化学シフト差の棒グラフ
5.4.2 構造式にマッピング
5.4.3 相関係数
5.4.4 最大誤差
5.4.5 差異の絶対平均
5.4.6 偏差二乗平均平方根
5.5 Bayes統計に基づく異性体の確率判定法:DP4とDP4+
5.5.1 DP4確率
5.5.2 DP4+確率
5.5.3 DP4, DP4+の原理
5.5.4 磁気遮蔽テンソルの化学シフトへの変換
5.5.5 SarottiのアプレットでDP4+を解析する
5.6 異性体ペアを識別するCP3解析
5.6.1 CP3の原理
5.6.2 CP3アプレットを利用する
5.6.3 Excelを利用したアプレット
5.6.4 DP4, DP4+, CP3における1H NMR化学シフトの扱いについて
5.6.5 CP3が効果的な例
5.7 化学シフト計算の実際
5.7.1



